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sophora

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媚薬プレイ①

題名どおり。とりあえず前置きまでです。
題名が本文の盛大なネタバレになってますが気にしない。
どのジャンルでも一度はやってみたくなるネタ。

***
その日、燐が雪男の机の上にその小瓶をみつけたのは、いくつかの偶然が重なった結果だった。
 夕食時間になっても雪男がいつまでもたっても帰ってこないので、まあ、どうせいつものように急な任務に駆り出されたのだろうと思って、さっさと夕食をとって自分のベッドで漫画を読みながらごろごろしてたわけだが、ふとしたことで、そーいえばあいつ、帰ってくるまでになんか宿題やっとけっていってたよなーと思ったのものめったにないことだったし、そこでわざわざ起き上がってその宿題の行方を探して雪男の机の方へと近づいていったのも何かの気の迷いといえばそうかもしれなかった。
「んー、ないなー?」
 だから、そう言いながら机の周りを見渡した燐に何か予感めいたものがあったのかというと、そうだともいえるし、そうじゃなかったともいえる。まあ、つまり本当に偶然だったということだ。
 綺麗に片付けられた雪男の机の上には目的の宿題らしきものはなかった。ただパソコンの脇にすっかり忘れ去れたように転がされた、だが、なぜだか存在感のある小瓶が置かれていた。
「なんだ?これ」
 燐はちょっと心惹かれてそっと手を伸ばした。小瓶を手に取りデスクライトの灯りに翳す。中に入ったとろりとした液体が七色に輝いた。いやに幻想的で人を惹き寄せる色だなと思い、小瓶のふたを摘んで開けてみる。
「あっ」
 ふたを開けた途端、ふわりとよい香りが広がる。柑橘系の甘いがすっきりとした香りだ。どこかなつかしく、嗅ぎ覚えのある香り。なんだっけ?と燐が思考を巡らせたが、一向に思い出せない。
 うーん、と腕を組みながら首をひねる。もう一度嗅ぎたくなって鼻をよせると何ともいえないいい気分になった。
 それにしても、これはいったいなんなんだろう。
「飲み物……ってわけじゃないんだよな?」
 それにしては入れ物が変だ。匂いからいえばオレンジジュースの匂いに近いのだけれども、液体の色から言ってどうも普通のジュースの色じゃない。では、他に考えられるのは?
「匂いからして……香水とか、か?」
 いやいや、まさか。
 いきなり雪男が香水なんかをつけはじめたら、それこそ天地がひっくりかえるというか、そんなことになれば兄として、おまえそんな色気をだして何したいんだと一晩問い詰めたいところではある。
「いや、待てよ――?」
 燐は腕を組んで、なけなしの推理力を働かせてみる。気分はさながら名探偵コ●ンである。雪男がいれば『体は大人、頭脳は子供』のくせに何やってるんだか、という突っ込みが隣から入るのだろうが、あいにく当人不在のため、燐はこの推理ごっこを思う存分楽しめるというわけだ。
「じゃあ、たとえば香水だとして……」
 それがなぜここに?
 普通に考えたら、雪男自身が購入してきたものではないと思われる。たとえ色気が出てきたとしても、こんな匂いを選ぶとはとても思えない。
 そうなるとますますこんな甘い、女子が好みそうな品が雪男の机の上にあることに燐は非常に違和感を覚えたのだった。
「まさか……」
 はっと燐は頭に思い浮かんだ想像に目を見開いた。
「誰かに押し付けられたのか……?」
 それは十分に考えられることだった。雪男は女子に大変人気がある。入試トップ入学、特進科のエリートで背も高くて顔は優男面である。どんな女子にもわけへだてなくさわやか笑顔での対応である。それがまた彼女らを有頂天にさせて、ますます雪男の株は上がる一方なのである。
 日ごろから燐はそれらの雪男に対する彼女たちのアプローチを非常に好ましく思っていなかったため(醜い嫉妬だといいたいなら言えばいい、だいだい兄をさしおいてきゃーきゃー言われ平然としてるのが許せない)この香水がそれら誰かからの贈り物なのではないかという想像にいたった途端、先ほどまでの爽やかな気分はどこかに飛んでいってしまい、もやもやとしたどす黒いものに支配され、眉を寄せてその小瓶を睨みつけたのだった。
 しかし、その香水の方はそんな燐の思いとは関係なく優雅に小瓶の中でゆらゆらと揺れている。一瞬、いらっとした燐はその小瓶を壁に向かって投げつけようとしたが、ふとあることを思いついてそれを思いとどまった。
 燐は手にした小瓶をまじまじと見る。七色に光る香水らしきものは、あまやかな匂いを発している。
 それは、とても、とても魅力的な香りだ。それに匂いからしてあまり口にしたって害があるわけじゃあなさそうな匂いだ。一流料理人(素人)としてのカンがそう告げている。
 そう思った燐は小瓶を持ち上げ、その入り口を口元につけた。
 だって、投げ捨てるには、ちょっと高価そうなもの(予想)だったし、一応他人のものを粗雑に扱うのは気が引ける。でも、この身体の中に収めてしまえば、証拠隠滅だ。何より、小瓶から香る匂いはとてもいい香りがして、口をつければさぞかし甘く口の中で溶けるのだろうと思われたからだった。
「んっ……」
 燐は遠慮という言葉をどこかに捨て去って、小瓶を一気に傾ける。舌の上に流れ出たその液体は、予想を遥かに越えて甘く、口中の唾液が大量にあふれ出し、それを飲み込むと鼻腔いっぱいに爽やかな匂いが満ちた。
 強い酒を飲んだらこんな風なのかな?と思わせるような酩酊感が一瞬で燐を襲う。くらり、として壁によりかかり、燐はしばし天井を見上げていた。極上の花の蜜を舐めたような、いや、もっと咽喉をやくような何か、なのだが、やはりうまくたとえることができなかった。
 なんとかうまいたとえがないものかと燐がしばらくうーん、うーんと首をひねりながら唸っていると、入り口の扉が開き、小瓶の持ち主が顔をだした。
「兄さん?いるの?」
 いきなり当の本人のご登場である。びくりと肩を揺らすと燐は思わず手にしていた小瓶をポケットの中に隠した。
 先ほどの強気はどこへ行ったのか、持ち主の不在に不貞をやらかした罪悪感に駆られる。
「え、ええと、おかえり」
「うん。遅くなってごめん。急な任務が入っちゃって。連絡しようとは思ったんだけど、なかなかその暇がなくってさ」
 シビアな任務だったのか、少し疲労感を残した雪男がコートを脱いでハンガーに掛ける。燐はじりじりと雪男の目に机が入らないような場所に移動しつつも差し障りのない会話を振った。
「へえ。つーか、おまえ飯くってないだろ?食うか?」
「あ、うん。お腹へったよ」
「そーか、そーか。じゃあ、食堂行こう。作ってやっから。な、すぐに行こう」
 燐は部屋着に着替えた雪男をせかすように背中を押した。燐としては一刻も早くこの部屋から出てしまいたい気分だった。
 兄の日々の異変をとらえることにかけては半端ない能力持ち合わせている弟は当然その様子がおかしいということに気づいて、不審そうに尋ねた。
「何?どうしたんだよ、兄さん」
「俺もおまえ待ってたら腹へっちまって。いや、まあ夕飯食べたことは食べたんだけど、俺も何か軽いもんでも食べよっかなーって」
「へえ、そうなの」
 納得したのかしないのか、一応雪男はうなずいて燐に背中を押されるまま食堂へと歩き始めた。燐は流れる冷や汗を隠し隠し、ほっとして雪男の後にしたがった。
 ガラスの小瓶が入って少し膨らんだポケットを隠すように手で押さえながら。

***

次回は本番(たぶん)

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プロフィール

HN:
如月 ちょこ
性別:
女性
自己紹介:
■ 青の祓魔師二次創作
 テキストサイト。腐向け。
■ 雪燐中心です。
   藤メフィもあります。
■ 書店委託開始しました。
   詳細はofflineで。

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