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sophora

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【藤メフィ】息もできない海の底で

久しぶりの藤メフィです。最近大人組みが足りていません。すごい飢餓状態。
以前にメモってたやつをサルベージ。

内容
ずーっと獅郎とお友達関係で我慢していたメフィストがとうとう我慢しきれなくなって告白します。いい大人たちが不器用にもぞもぞしているのが好きです。メッフィーは獅郎のことが大好きだったらいいなっていう妄想です。

よろしければ、つづきからどうぞ。
 正十字学園の最上部にあるメフィストの私邸。その一室でたった二人による優雅な酒宴が開かれていた。
 糊の利いた真っ白なテーブルクロスの掛かった食卓の上には極上の赤ワインと美しく並べられたオリーブとチーズ。
 無色透明の指紋ひとつついていないワイングラスはバカラ製。そこに注がれたメルロー種の濃い赤色はどこか血の色を思わせる。
 メフィストはグラスを回し香りを楽しんだ後、ゆっくりとグラスを傾けた。なめらかな舌触りの後、プラムのような甘い匂いが鼻を抜けていく。
 満足げにひとつため息をついた後、メフィストはテーブルの向かいに座り同じようにグラスを傾けている今夜唯一の主賓に艶かしい視線を送り、口角を横に引いた。
「貴方のために用意したワインの味はいかがです?藤本」
 探るように相手をみつめ、含み笑いをする。別に特に意識してのことではなかったが、獅郎はそうは取らなかったようだ。苦虫を噛み潰したような顔をして、ぐいっとグラスを煽る。ぷはっと行儀わるく息を吐くと、獅郎は近くにあったワインサーバーからボトルを取り上げ、乱暴に自分のグラスへと二杯目を注いだ。
 獅郎の態度は一級品ばかりを前にした客のマナーとして誉められたものではなかったが、メフィストはその獅郎のひとつひとつの行動も酒のつまみになるといわんばかりに、笑みを浮かべたままグラスに口をつける。
「・・・・・・じろじろみんな」
 獅郎はメフィストのまとわりつくような視線に顔を歪め、睨みつけ返しながら目の前のオリーブをがりりと噛み砕く。
 メフィストはグラスを優雅にテーブルに置くと、小首を傾げて尋ねた。
「なぜ?」
「なぜって、なあ!そんな風にみられたらうまい酒だって味わかんなくなっちまうだろーが!」
「だから、なぜそうなってしまうのかと聞いているのですよ。おかしいですね、藤本。私はいつもと変わらないつもりですが」
「いつもと一緒、だと?どこがだよ。こんなセッティングわざわざしやがって。なにたくらんでやがる」
 メフィストと獅郎が酒を飲み交わすことは珍しいことではなかったが、大概は無礼講で、獅郎がメフィストのワインセラーから適当なものを拝借するか、気に入った一升瓶を抱えて持ってくるのが常だった。
 それが、今日は訪ねてきた途端、普段ならぐだぐだな浴衣姿で獅郎を迎えるメフィストが妙に格式ばった姿で獅郎をエスコートしてみせる。
 なるほど、獅郎からしてみれば、それは確かに警戒せざるをえないだろうなとメフィストは疑わしげな視線を向けてくる獅郎に肩を竦めた。
「まあ、そうですね。なんといっていいのやら」
 メフィストはグラスを持って立ち上がると、テーブルの向かいにいる獅郎の方まで歩いていって、一口ワインを口に含んでから顔を近づけた。
「私はね、ちょっと飽きてしまったんですよ」
 だから、気分を一新してみようかと思ったんです、とメフィストは続ける。
「飽きただぁ?なんにだよ」
「貴方との関係に」
 あえて含みを持たせた言い方をして、伺うように獅郎を見ると、獅郎はわけがわからないといったような顔をして、メフィストを見る。
「わからないんですか?」
 メフィストは獅郎の耳元に意図して艶の帯びた声で囁きかける。獅郎ははっとしたように目を見開き、ついで視線をさ迷わせ、口篭もった。
「か、関係、つったって・・・・・・」
 獅郎は何気なさを装い手元にあるグラスを勢いよくあおってみせるが、勢いあまったのか、ワインが気管に入りむせかえった。
 わかりやすいほど動揺している姿を見て、メフィストは内心ほくそえむ。そうそう、そうやってうろたえる姿のひとつでも見せてもらわなければ、こんな風にセッティングまでしてみせた意味がない。
 メフィストにそう思われているとはつゆとも知らず、獅郎は咳を繰り返し、ようやくそれがおさまった頃に精一杯の平静を装って答えた。
「俺とお前の関係つーと、親友だってことか」
「ええ、そう。親友という関係です」
「それにあきたって?」
「ええ、あきあきしてきました」
「なんだよ・・・・・・人間と悪魔じゃ友情を結べねぇってか?」
「そもそも友情なんて私と貴方の間にありましたっけね・・・・・・いや、それはおいておいて」
 はぁとメフィストはため息をついて、グラスをテーブルに置くと腰を折って獅郎の顔を覗き込んだ。じっとみつめると、獅郎は何かやましいことがあるかのように目を逸らす。
「貴方だって、わかってるでしょう・・・・・・?」
「・・・・・・なんのことだ」
「気づいているはずです」
「だから、何をだって言ってんだよ」
「本当に気づいてないと」
「気づいてねぇ、気づいてねぇ」
「嘘です。こっちをちゃんと見なさい」
「嫌だね。何で俺がお前のいうこと聞かなきゃなんねえんだよ」
 あくまでもシラ切ろうとする獅郎に苛立ちを覚え、メフィストはそうですか、と低く返すとふいっと獅郎に背を向けて自分の席に戻った。
 新しいボトルを開け、なみなみとワインを注ぐとおざなりにグラスをあおる。グラスが空になると、また新たに注ぎ直し黙々と酒を飲みつづけた。
「おい、メフィスト」
 そんなメフィストに獅郎はむっつりと声をかける。メフィストは答えることなく、ただグラスを傾けつづける。
「こら、聞えてんだろ、メフィスト!」
 続けて何度も名を呼ばれるが、それでも答えてやる気にはならなかった。つん、と顔を背けメフィストがワインを舌の上で転がしていると、がたっと音を立てて席を立った獅郎がつかつかとこちらへとやってくる。
「メフィスト」
 今度はメフィストの方が獅郎に見下ろされる。そこには先ほどの誤魔化すような様子はなく、ほとほと困り果てたといった表情だけがある。
「なんです?」
「お前・・・・・・今更、なぁ」
 獅郎は諦めたように深くため息をつき、眼鏡をはずしてメフィストに顔を寄せた。
「今更、どうしてこんなこと言い出すんだ」
「だから、飽きたからだといったでしょう」
 メフィストは息のかかるところまで近づいてきた獅郎の顔を食い入るようにみつめ、答えた。
「もう、はるか昔に貴方が始めた友人ごっこに乗ったのは確かに私の方ですが。それもいいかげん嫌気がさしてきたところだったんですよ」
 メフィストは心底うんざりしたように吐き捨てた。
「貴方だって。不自然さを感じていたんでしょう?人間と悪魔の友情だなんて、生粋の祓魔師である貴方がそんなことを言って」
「おい、」
「そうやって、予防線を張って。線を引けば安心だったんですか。それ以上は踏み越えられないと。貴方も、私も」
「メフィスト、お前」
「だったら、なぜ友となどと呼んだのです?友情などと曖昧な枠にはめてしまわずに、ただ、敵対する悪魔として扱えばよかったのに、それを」
「わかった、黙れ」
「それをこんな風に、求めずにはいられないようにして」
「―――ちくしょうっ」
 獅郎は耐えられなくなったといわんばかりに悪態を吐いてから、メフィストの髪をきつく掴み上げるとそのまま噛み付くように唇を合わせた。
「ふっ・・・・・・」
 勢いあまってがちりと当たった歯がメフィストの唇を傷つける。途端口の中に広がる血の味にメフィストはぞくりと被虐心が高まって、それを獅郎にも味あわせたくなり口を開いた。
 するりと獅郎の舌が入り込んできてメフィストの、悪魔の血と唾液と自分のそれを掻き混ぜる。痺れるような歓喜が身体中に走って、メフィストは甘い吐息をついた。
 口付けから解放されて、息がかかるほど間近から獅郎の顔をみつめる。苦虫を噛み潰したような、しかし、メフィストに煽られた熱に浮かされた顔をしてこちらを見てくる獅郎にメフィストは長年の悲願を成就したと言わんばかりの笑みをみせた。
「・・・・・・悪魔との禁断のくちづけのお味はいかがでしたか?」
「この俺としたことが、悪魔の誘惑にはめられるとはな」
「ずっと、何十年も耐えてこられたのに、ですか。それはさぞかし、大変だったでしょうね。ご愁傷さまです」
「メフィスト、てめぇ」
 嘲るように肩をすくめられて、憤った獅郎がメフィストに詰め寄ろうとすると、メフィストはふんと鼻を鳴らし、獅郎に指を突きつけた。
「貴方に怒る権利があるとでも?それを選択したのは貴方自身でしょう?それに比べて、私ときたら・・・・・・」
 はあ、とため息をつき、メフィストはぽんと獅郎の胸元を押すと近づけていた身体を離す。獅郎が驚いたようにメフィストを見返すと、メフィストは窓際まで歩いていって、そこからぼんやりと夜空に浮かぶ三日月を見上げた。
「・・・・・・なんだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「メフィスト?」
 獅郎がいぶかしげに声をかけると、メフィストは窓際にもたれかけていた身体を起こし獅郎の方へと向き直って自嘲するようひっそりとつぶやく。
「息も出来ない海の底で貴方を想う」
 まるで、深い海に沈められた魚が空気を求めてもがくように、メフィストは顔を歪めて獅郎をみつめた。
「ずっと、そんな風に貴方を想ってきました」
 驚きに目を見開いた獅郎にメフィストは微笑む。そして、肩をすくめながら続ける。
「そして、いまでも。つまり、今、私は苦しくて死にそうだということです」
 獅郎は呆けたように口をぽかんと開けたままメフィストをみつめ、しばらくするとあーっと声を荒げて頭を掻き毟ってから、わずかに顔を赤らめてメフィストを睨みつけた。
「お前な、そういうことをな、そんな顔で言われたらなっ」
「言われたら?」
「言われたら、我慢できるわけねぇじゃねーかよっ」
 そういうと、獅郎はメフィストの腕を強く引き、そのまま抱き寄せると再び荒々しく唇を奪う。
「ちょ、ふ、じもとっ、くるしっ」
 任務の時と同じように手加減なしのその口付けにメフィストが抗うと、獅郎は何十年分かの欲求不満を満たそうというかのように、メフィストを封じこめて唇を吸う。
「どうせ、今まで、苦しくて死にそうだったんだろ。じゃあ、俺とのキスで死んじまえ」
 一端顔を上げてそういうと、獅郎は口付けを再開する。
 ああ、どうしよう、本当に死んでしまいそうだとメフィストは今度は別の息苦しさにさいなまれて、眩暈でふらつく身体を獅郎に預けながら、息もつかせぬキスに酔ったのだった。

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プロフィール

HN:
如月 ちょこ
性別:
女性
自己紹介:
■ 青の祓魔師二次創作
 テキストサイト。腐向け。
■ 雪燐中心です。
   藤メフィもあります。
■ 書店委託開始しました。
   詳細はofflineで。

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