【9/25聖域新刊】雪涅槃【雪燐】
●A5 / P52 / FC / R18 / 500円
●以前アップした『愛のカタチ』と同設定の雪燐話です。
20年後、身体が成長しない燐と35歳の雪男。雪男は祓魔塾講師、燐は祓魔師をしていて同居している設定です。
日常のらぶらぶほのぼのとシリアス話を含めた短編集です。
●サンプルはつづきからどうぞ。
●当作品は18R指定です。
即売会でご購入の際、年齢確認のため身分証明書のご提示をお願いする場合がありますのでご了承下さい。
***
予約したフレンチレストランは、今流行りのと銘打っているわりには、アットホームな雰囲気の店だった。ただどの席も完全個室になっていて、訳ありのカップルには最適な店だ。そういうところが流行っている理由なのかもしれない。
ちなみに、自分たちはその訳ありカップルの最たるものである。こんなカップルだらけの中で、男同士、それも年の差二十歳(見た目には)、どういう関係だろうと訝しがられてもしかたがないが、一応、ウェイターはにこやかに笑みを浮かべて席へ案内してくれた。
「兄さん、何飲む?」
席について、メニューを開いた雪男に、燐はコートを脱ぎながら即答した。
「グリュッグのロゼ」
「ちょっと!いくらすると思ってんの!却下だよ、却下」
燐の口から一桁違う高級シャンパンの銘柄が出て、雪男はメニューを取り落とした。
「大体そんなの、この店においてないでしょ」
「いやー、どこまで大盤振る舞いしてくれっかなーと思って。この間臨時ボーナス出たんだろ。少しぐらいいいじゃん」
「違う、あれはボーナスじゃなくて、研究費。兄さんの酒代になんか使えないよ」
「ちぇっ、ケチ」
仕方がないので、手ごろそうなスパークリングワインを選ぶ。その間に雪男はウェイターを呼んでお勧め料理を聞いている。燐は、肘をついた手の上に顔を乗せながら、ふーんとそれを観察していた。
こうやって、流行りの店に連れてきて、相手に好みを聞き、適当な料理を手早くセレクトしてみせる。
うちの弟はいつのまにこういう事ができる男になったんだろうか、と燐はしみじみと思う。燐と一緒にいる時は見せない雪男の一面。こういうところが世の中の女性たちを夢中にさせるのだろう。家にいるときの雪男をみて、なんであんなにモテるんだと首を傾げる燐も、今日のようなエスコートをされると、納得がいく。
この間も、女性の祓魔師が雪男が独身でいるなんて人類の損失だといっていたけど、逆に誰かのものになるだとしたら、それはそれで耐えられないと騒いでいて、じゃあ、どっちだったらいいんだよと思った覚えがある。
―まあ、こいつは俺のものなんだけど。
小さな優越感に満たされながら、燐は自分の恋人をにやけながら眺めた。
「何?兄さん、さっきからじっと人の顔みて」
「いやぁ、お前、いい男だなぁって思って」
しみじみと燐が言うと、何を勘違いしたのか雪男は眉を顰める。
「誉めても、これ以上は何にもでないよ」
「ちげぇって。こんなにいい男がさぁ、こんな洒落た店に兄貴ときてんのはもったいないんじゃないかってこと」
燐がスパーリングワインの注がれたグラスを軽く持ち上げて、その向こうの雪男に試すような視線を送ると、雪男はふっと微笑して、燐のその視線を受け止める。
「こうやって、わざわざ予約も取って、機嫌をとるように欲しいもの買ってあげて?おいしいお酒と料理をおごってってこと?」
「うん」
「ねえ、兄さん。男がさぁ、そういうことするときってどんな気持ちでやってるかわかる?」
雪男が目を眇めて、じっとこちらを見てくる。その瞳に宿る色気に、燐はぞくりとして、肌を粟立たせた。
「わ、かんねぇ」
どぎまぎして答えると、雪男はグラスを傾け、中の赤ワインを飲み干す。少し唇にこぼれた濃い赤を舌で舐めあげる。
「それはねぇ」
雪男はもう一度、燐にみえるように舌で唇をなぞった。それがまるで行為の最中のしぐさのようで、燐はかっと顔を赤らめた。
「下心があるときだよ、兄さん」
「し、下心?」
「そ、お願いがあるんだ」
「な、なんだよ」
「ねえ、うちに帰る前に、もっと楽しいところいこうか」
「楽しいところ?」
「うん、そう。兄さん、楽しいこと好きでしょう?」
「す、きだけど、好きだけどな、雪男。あの・・・・・・」
「じゃあ、早く、お酒飲んじゃって。そこへ行こう」
にっこり笑って、燐にグラスを飲み干すように促す雪男の迫力に燐は何も言い返すことができず、混乱しながら勧められるがままグラスの酒を煽ったのだった。
***
こんな話の後にくるのは・・・当然、わかってるよな(笑
エロが多分に含まれているのでお気をつけください。
シリアス話は自分だけ年を取っていくことについて雪男がある決断をする、といったような内容です。
予約したフレンチレストランは、今流行りのと銘打っているわりには、アットホームな雰囲気の店だった。ただどの席も完全個室になっていて、訳ありのカップルには最適な店だ。そういうところが流行っている理由なのかもしれない。
ちなみに、自分たちはその訳ありカップルの最たるものである。こんなカップルだらけの中で、男同士、それも年の差二十歳(見た目には)、どういう関係だろうと訝しがられてもしかたがないが、一応、ウェイターはにこやかに笑みを浮かべて席へ案内してくれた。
「兄さん、何飲む?」
席について、メニューを開いた雪男に、燐はコートを脱ぎながら即答した。
「グリュッグのロゼ」
「ちょっと!いくらすると思ってんの!却下だよ、却下」
燐の口から一桁違う高級シャンパンの銘柄が出て、雪男はメニューを取り落とした。
「大体そんなの、この店においてないでしょ」
「いやー、どこまで大盤振る舞いしてくれっかなーと思って。この間臨時ボーナス出たんだろ。少しぐらいいいじゃん」
「違う、あれはボーナスじゃなくて、研究費。兄さんの酒代になんか使えないよ」
「ちぇっ、ケチ」
仕方がないので、手ごろそうなスパークリングワインを選ぶ。その間に雪男はウェイターを呼んでお勧め料理を聞いている。燐は、肘をついた手の上に顔を乗せながら、ふーんとそれを観察していた。
こうやって、流行りの店に連れてきて、相手に好みを聞き、適当な料理を手早くセレクトしてみせる。
うちの弟はいつのまにこういう事ができる男になったんだろうか、と燐はしみじみと思う。燐と一緒にいる時は見せない雪男の一面。こういうところが世の中の女性たちを夢中にさせるのだろう。家にいるときの雪男をみて、なんであんなにモテるんだと首を傾げる燐も、今日のようなエスコートをされると、納得がいく。
この間も、女性の祓魔師が雪男が独身でいるなんて人類の損失だといっていたけど、逆に誰かのものになるだとしたら、それはそれで耐えられないと騒いでいて、じゃあ、どっちだったらいいんだよと思った覚えがある。
―まあ、こいつは俺のものなんだけど。
小さな優越感に満たされながら、燐は自分の恋人をにやけながら眺めた。
「何?兄さん、さっきからじっと人の顔みて」
「いやぁ、お前、いい男だなぁって思って」
しみじみと燐が言うと、何を勘違いしたのか雪男は眉を顰める。
「誉めても、これ以上は何にもでないよ」
「ちげぇって。こんなにいい男がさぁ、こんな洒落た店に兄貴ときてんのはもったいないんじゃないかってこと」
燐がスパーリングワインの注がれたグラスを軽く持ち上げて、その向こうの雪男に試すような視線を送ると、雪男はふっと微笑して、燐のその視線を受け止める。
「こうやって、わざわざ予約も取って、機嫌をとるように欲しいもの買ってあげて?おいしいお酒と料理をおごってってこと?」
「うん」
「ねえ、兄さん。男がさぁ、そういうことするときってどんな気持ちでやってるかわかる?」
雪男が目を眇めて、じっとこちらを見てくる。その瞳に宿る色気に、燐はぞくりとして、肌を粟立たせた。
「わ、かんねぇ」
どぎまぎして答えると、雪男はグラスを傾け、中の赤ワインを飲み干す。少し唇にこぼれた濃い赤を舌で舐めあげる。
「それはねぇ」
雪男はもう一度、燐にみえるように舌で唇をなぞった。それがまるで行為の最中のしぐさのようで、燐はかっと顔を赤らめた。
「下心があるときだよ、兄さん」
「し、下心?」
「そ、お願いがあるんだ」
「な、なんだよ」
「ねえ、うちに帰る前に、もっと楽しいところいこうか」
「楽しいところ?」
「うん、そう。兄さん、楽しいこと好きでしょう?」
「す、きだけど、好きだけどな、雪男。あの・・・・・・」
「じゃあ、早く、お酒飲んじゃって。そこへ行こう」
にっこり笑って、燐にグラスを飲み干すように促す雪男の迫力に燐は何も言い返すことができず、混乱しながら勧められるがままグラスの酒を煽ったのだった。
***
こんな話の後にくるのは・・・当然、わかってるよな(笑
エロが多分に含まれているのでお気をつけください。
シリアス話は自分だけ年を取っていくことについて雪男がある決断をする、といったような内容です。
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