【雪燐】愛のカタチ
- 2011/07/01 (Fri)
- 雪燐小説 |
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先日いっていた20年後、35歳×15歳(肉体的な意味で)ネタ。
35歳の雪男に夢を見すぎている私がいる。
燐は永遠に天使。マジ天使ということでよろしくおねがいします。
20年後はあいかわらず雪男は祓魔塾講師をしていて燐は祓魔師をやっています。同居中という設定。
R18なのでお気をつけを。
35歳の雪男に夢を見すぎている私がいる。
燐は永遠に天使。マジ天使ということでよろしくおねがいします。
20年後はあいかわらず雪男は祓魔塾講師をしていて燐は祓魔師をやっています。同居中という設定。
R18なのでお気をつけを。
「雪男、お前、ここ白髪はえてっぞ」
夕食後の洗い物を終えて台所からリビングへと戻って来たら、ソファに座って本を読んでいる雪男の後頭部にちらりと白いものが見えたので、俺は雪男の頭を覗き込んだ。
「えっ?なに?」
雪男が振り向いてしまってそれを見失う前に、俺はすかさずそれを摘まんでえいやっと力を入れる。
「いたっ」
ぷちりと小さい音がして、俺の手には短くて白い毛が残った。ついでに黒い毛も二三本抜けてしまったが、それはご愛嬌。
「何すんだよ!兄さん」
「や、だから、白髪」
「え、ウソ」
俺がそれをみせると、雪男は眼鏡を押し上げてまじまじと見る。そして、その後ひどくショックを受けたように黙りこんだ。最近は年をとって何があっても動じなくなってきたから、この表情は珍しい。昔はホクロが増えたといってからかうと真に受けてよくこんな顔したものだったが。
「まだあるかもしれねぇから、とってやるよ」
俺が雪男の頭をもっとよく見ようと顔を近づけると、雪男は逃げるようにソファの端へと身を寄せた。
「ちょっとやめてよ、兄さん。抜いたら余計増えるっていうでしょ」
「でもなぁ、結構めだつぞ、これ」
「本当に?」
俺が雪男の目の前で先ほどの白髪を振って見せると、雪男は言い返しもせずにしゅんと肩を落とす。なるほど、三十路半ばも近くなるとこんなことが本当に身に応えるらしい。
なんだか申し訳ないような気分になって、俺はソファの前側へと回ると雪男の隣へ座って慰めるように言った。
「まあ若い頃から苦労してもんなー、お前。いいじゃん。ダンディにみえて」
いいよいいよ、かっこいいよお前って言って頭を撫でてやろうとしたら、すごく嫌な顔をされた。
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「え?誰?」
首を傾げると、深いため息をつかれる。なんだよ、俺のことかよ。
「ため息ばっかついてると余計に白髪ふえっぞ」
「そりゃ、兄さんはいつまでも若くていいけどね」
雪男にうらめしそうに見られて、俺は肩をすくめるしかない。
雪男は最近ますます俺との外見的差が著しくなっていくことに焦りを感じているらしい。
そういうことはふつう、俺の方が気にすることなんだろうが、だってしょうがないものはしょうがない。俺は悪魔なんだから。
初めの十年はきつかった。いつまでたっても十五歳から変わらない俺の外見を大人びていく仲間たちは奇異と同情の入り混じった目で見ていた。こんな俺でもその事実はそれなりにこたえた。
十五年過ぎたあたりからはもう周りも慣れてきてしまってむしろ俺に変化があることに違和感を持つみたいだ。この間ちょっと髪を切ったら周囲にえらい反応された。あんまり外見を変えるなってことらしい。
その中で雪男だけが、俺が変わらないことに、いやそれよりも多分自分と差がついてくることにだろう、まるで小さな子供が親から引き離されるのを恐れるように、怯える。
俺はなんだかな、と思って雰囲気を変えるようにちゃかして言った。
「普通の三十男に比べりゃ、お前、若く見えるほうだと思うけど」
祓魔塾の教師たち見てみろ。雪男と同年代のやつらはみんな親父だ。雪男はいっても二十代後半ぐらいに見える。肉親の欲目じゃないけど、二十年たってもうちの弟はイケメンだ。
「いつまで経ってもすべすべの肌しているような人にいわれたくないよ」
俺の気遣いを敏感に感じ取ったのか、雪男はソファの端から俺の方へと寄ってきて、くすりと笑う。
「すべすべって……俺、結構荒れてっぞ」
俺はぺたぺたと自分の顔を触りながら答える。最近悪魔祓いに忙しくちゃんとした食事がとれていないことが多くて、顔とかがさがさだ。忙しくても料理だけはきちんとすることがポリシーだっただけに、ちょっと情けない。
「いや、そういう意味じゃなくってさ……」
雪男は苦笑すると、するりと俺のシャツから手を差し入れ、わき腹をそっと触る。
「ひゃっ」
「こっちのこと」
さわさわと脇腹から腹筋の方へと手を動かし、それを胸元へと移動させる。
「ほら、ここの辺りとか。筋肉もあんまりつかなかったね。いつまでたっても十五歳のままだ」
胸元を上下に撫ぜおろし、感触を楽しみむようにそれを繰りかえす。時折突起に指先が触れて、俺の身体がびくりと跳ねる。
「お前っ、それ、おやじ発言……っ!」
「そうかも。最近兄さんとやってると、すごく若い子にいたずらしてるような気分になるよ。癖になりそう」
雪男の声が弾んでる。ちらりと雪男の顔を見たら眼鏡の奥の瞳がきらきらと輝いていた。酔っぱらいの親父がよくこういう顔をして女の子にセクハラしているのをみかける。そいつらと同じかよ。
俺はふと最近聞いた噂のことを思い出して、きりりと雪男を睨んだ。
「てめっ、そんなこといって……塾生に手ぇだすなよ!」
「出すわけないだろ。まだ子供じゃないか」
心外だ、という風に答える雪男に俺は疑いの眼を向ける。
「そういうけどな……最近、おまえ塾生たちになんて噂されてるか知ってるか?」
「なに?」
「奥村先生は若い子好きで、特に手のかかる子が好きだから問題児してれば、先生の気をひけるかも、だって」
「・・・・・・どこからそんな根も葉もないことを」
雪男はなんで最近厄介ごとを持ち込む女子生徒が増えたかようやくわかった、と溜息をついた。
「だいたいさ、その歳でまだ独身だから女子生徒に狙われるんだよ。早く結婚しちまえばいいのに」
「まだ、そんなこといってんの?いいかげんにしたら?」
雪男がむっとしたように顔を歪めて俺をじっと見つめる。雪男が言いたいことはわかってる。まあ、二十年来こうやって兄弟でべたべたしているんだから、雪男が彼女作ったり、結婚したりなんかできるわけない。
それでも俺は最近の、周囲からのさまざまなアプローチを考慮して提案してみる。
「だってさぁ、しつこいぐらい聞かれるんだぞ?生徒だけじゃなくて、適齢期の女の人にも。今日も任務中だっていうのに、しつこくさ、雪男くんにはおつきあいしている人はいるの?結婚の予定はあるの?って、うぜーんだよ。おまえが結婚しちまえばそんなこと聞かれずにすむだろ?」
「それはそうだけどね……けどそんな理由で結婚なんかできません。本当に好きな人とじゃなきゃ、結婚なんてできるわけないだろ」
「じゃあ、そーゆー奴、探せよ」
「探すまでもないよ、目の前にいるもの」
雪男は顔を近づけて、俺の額にこつんと自分のそれをぶつけると至近距離から真剣な瞳を向けてくる。
「なっ――」
俺はかぁっと顔を赤らめる。なんで、こういうこと素面で言えるんだよ、こいつ。
雪男が大人になって変わったことといえば、こういう歯が浮くようなセリフをストレートに俺にぶつけてくるようになったことだ。
昔はもっと婉曲的で、それで大体俺に伝わらずにいらいらと怒鳴りちらすことが多かったんだけど。まあはっきり言わなきゃ俺にはわかんないってこと、この二十年で学んだんだな。
「・・・・・・兄さんは?」
唇があとわずかでくっつきそうな位置で囁かれる。息が唇にあたってもぞもぞした。
俺は頭がくらくらするのを感じながらどう答えるかを考える。考えるが、この三十男に何をいっても勝てる気がしなかったので、しょうがなく、目の前の唇に自分のそれを押し付けた。
「っ・・・、ん、ん」
雪男はキスをしながら笑っている。口付けには性急さはなく、だが十分に官能的だ。舌で俺の唇をねっとりと舐め上げた後、それをするりと咥内へと忍び込ませ、歯列をなぞってから俺の舌を捕らえる。ざらざらしたそれを擦り付け合い、唾液で口の中がいっぱいになって俺が苦しくなってくるのを見計らって、解放する。俺が喉をコクリと鳴らしてそれを飲み下すと、ご褒美といった感じで軽く唇にキスをしてきた。
「ゆ、き・・・おっ」
もう、このキスだけで十分に俺は腰砕けで、とろんとした目で雪男を見上げると雪男はふっと微笑んで、俺の服に手をかける。
ボタンを器用に片手ではずしていき、もう片方の手は裾から滑り込ませて俺の肌を撫でさする。俺の快楽を途切れさせないようにする配慮。さすが、三十路。そこらへんの高校生とはわけが違う。
俺といえば、確かに雪男と同じだけの経験年数を経てきているというのに、なぜか十五の時と変わらず、雪男の愛撫にあっという間に高まってしまって、急かすように雪男の袖を引っ張った。
「なぁ、なぁ」
「なあに?兄さん」
「はや、く・・・なぁ、はやく、してくれよ」
何を早くして欲しいのか自分でもよくわかっていない。もっと直接的な愛撫が欲しいのか、このじりじりとした熱に侵された気分そのものを終らせたいのか、その判断はすべて雪男にゆだねてしまって、俺はあっという間に脱がされてしまった自分の裸をソファの上に転がすことしかできない。
「兄さんは堪え性がないんだよね」
雪男はゆったりとした動作で俺の身体を開いていく。スラックスを脱がせ、内腿を撫ぜながら痙攣したようにびくつく下肢をじっくり眺め、それからようやく勃ちあがりかけて小刻みに震える俺のものを触った。
「んんんっ・・・・・・はぁ」
じんわりと下肢全体に痺れが広がる。すぐさま擦り上げて欲しいという気持ちと、待てば待つほど快感が高まるんだという思いで、じれて頭がパンクしそうになる。
「ゆきお・・・ぁ・・・ん」
裏の筋を親指で擦られ、先っぽのカウパーを全体に広げられ、すべりのよくなった性器全体をきゅきゅっとすりあげられれば、俺は涙を流して腰を振る。
「あ、あ、ん・・・・あっ・・!」
一度目の絶頂はあっけなくやってくる。ぶわっと全身の毛穴がひらいたような感覚、そしてどっと押し寄せる倦怠感。
「ふ・・・・・・っ」
荒い息を吐いて、くたりとソファに身を預けていると、雪男が身体を起こして上から俺を見下ろした。
「僕、服脱ぐから、その間兄さんは自分の広げておいて」
あっさりそういって、自分のシャツに手をかける。俺はぼーっとした頭で雪男に言われるがまま、指を後ろに伸ばして入口を探った。頭の片隅では十分にひどいことを言われているのだとわかってはいたが、本能が勝手に雪男のいうことを聞く。俺は腹の上に先ほど吐き出した自分の白濁をすくって、それを後孔に中指で押し込む。慣れている場所なので抵抗なくそこは俺の指を受け入れた。
「んっ・・・んっ」
そんな俺を見下ろしながら雪男は服を脱いでいく。普段はきっちりと祓魔師の制服を身につけているから日に焼けてはいない。けれど、第一線の祓魔師の身体となればそれだけで見ほれるほどのものなのだ。厚みのある大胸筋、腹筋はしっかり割れてるし、上腕二頭筋の張りとか半端ない。俺にはいつまでたっても身につかないものがそこにある。
それだけじゃない、二十代半ばくらいから、雪男が脱ぐともうなんというかそれだけでフェロモンがだだ漏れるっていうか、まあ服着ててもだだ漏れてるんだけど、そんな甘い蜜に引かれた女たちが老いも若きもふらふら近寄ってきてしょうがないくらいの色気が雪男の身体を包んでいる。
「あ、あ、ふっぁ、やぁ・・・・・・ゆきっ」
そんな雪男の身体をみているだけで、俺は熱を上げる。雪男にみつめられながら、後孔に差し込む指を二本に増やして音を立ててかき回した。服をすべて脱ぎ捨てた雪男の下半身に視線を下ろすと、十分に硬度の保たれたそれが存在を主張している。
「兄さん、準備はもういい?」
「いっ、から、はやっ・・・も、まて、ないっ」
「そう」
雪男は容赦なく俺の両足を掴むと、大胆に広げて腰を入れてくる。後孔に狙いを定めて、そのまま腰を突き出し一気に奥まで差し込んだ。
「ああっ」
内壁の抵抗とそれを無視するように侵入してくる雪男のペニス。心臓がどくどくと脈をうち、頭に血を上らせた。全身が痺れ、呼吸が苦しくなる。
「兄さん、ちゃんと息して」
「っは、はっ、ぁあっ」
ぱちん、と軽く雪男に頬を叩かれ、ようやく息ができるようになる。息苦しさが、切なさに変わってじわりじわりと身体中を侵食してくると、もう、俺は我慢がならなくなって、雪男に抱きついた。
「やぁっ、も、あん、あ、んぅ」
「兄さん、いいの?」
「いっ、いい・・・・・・い、から・・・も、う・・・やぁっ!」
雪男が奥の方を揺さぶる。がんがんと内臓を揺らされ、気が遠くなる。内壁が雪男をもう離さないというようにぎゅっと締め付けた。そうすると、自分の中で雪男の大きさを感じ取りますます痺れが走る。
「もう、イッていいよ」
雪男の一言が優しく耳元に囁きかけられる。俺は緊張していた身体をふっと緩めすべてを解放するように声を上げた。
やるだけやって精根尽き果てた俺たちは、いいかげん寝るために場所を寝室へと移した。
寝室には昔の寮時代と同じように少し離れた距離にお互いのベッドが置かれている。その片方に雪男が横になったのを見計らって、俺は雪男にそろりと近づいた。
よしよし、目を閉じた。もうそろそろ大丈夫だろう。
「――っ、兄さん、ちょっと、なんで人のパンツずりおろそうとしてんの!」
だが、あっさりと雪男は瞼を開き、下半身に顔をうずめている俺の頭をぽかりと叩いた。
もう寝たかと思ったのに、たぬき寝入りか、お前。
「うん、まあ、一応確認をさ」
殴られた頭を撫ぜながら、俺は作業を再開する。雪男はそれを止めようとパンツを引っ張り上げるのでベッドの上ではなんとも情けない攻防が続く。
「何?!あんだけやったのに、まだ足りないわけ?悪いけど、僕、兄さんみたいに若くないからもう十分だよ」
「そうやって、兄さんを絶倫みたいにいうな!いや、絶倫なのが悪いわけじゃないけど!むしろ誇るべきことだけどな!」
「なにわけわかんないこといってんの。頭の中も成長してないの?」
「だから、ちげーっての!俺は確認したくて・・・・・・」
俺は真剣な顔をして、雪男のそこを指さす。
「下の毛にも白髪はえてんのかってこと!」
「えっ・・・・・・」
雪男は絶句して俺をみつめる。俺はいかに自分の行いに正当性があるかを主張した。
「下の毛はなー、髪よりも白髪になりにくいんだよ。それなのに、下の毛にも白髪あったら、もう男として絶望的じゃん?だから、そうなのかどうかを調べてやろうと思って。さっきやってる時は俺からみえなかったからさ」
「何?!さっきあんなに喘いでおいて、そんなこと考えてたの、兄さん?!」
「んー、頭の片隅でちょこっと。なー、みせろよ」
「余計なお世話だ!っていうか、そんなこと考えてんな!」
雪男は二重にショックを受けたというような顔をして、布団を被って俺に背を向ける。
どうやら怒らせてしまったようだ。いや、へこませたって方が正解か。
「なぁ、ホント、確認だけだから、な?」
背中を慰めるようにぽんぽんと叩く。本当にこの年代の男ってナイーブなんだなぁ。
すると、布団から顔を出した雪男が不機嫌そうに振り返ってじろりと俺を見る。
「なんで、そんなの確認したいんだ。それにあったらどうすんの。ていうか、僕の下の毛が全部白髪になったら、どう責任とってくれるの!」
雪男がまるでそうなったら全部俺の責任だといわんばかりの形相でいうもんだから、俺はいやいやそれはまったくの言いがかりだと思ったのだけども、ここは兄として、愛する弟に俺の気持ちをちゃんと伝えておくべきだろうと思ったので、全身全霊の愛をこめて雪男に答えた。
「大丈夫。今はデリケートな肌にやさしい陰毛の白髪染めがあるから。買ってきて俺が白髪染めしてやるよ」
これこそ、究極の愛のカタチだろ!
夕食後の洗い物を終えて台所からリビングへと戻って来たら、ソファに座って本を読んでいる雪男の後頭部にちらりと白いものが見えたので、俺は雪男の頭を覗き込んだ。
「えっ?なに?」
雪男が振り向いてしまってそれを見失う前に、俺はすかさずそれを摘まんでえいやっと力を入れる。
「いたっ」
ぷちりと小さい音がして、俺の手には短くて白い毛が残った。ついでに黒い毛も二三本抜けてしまったが、それはご愛嬌。
「何すんだよ!兄さん」
「や、だから、白髪」
「え、ウソ」
俺がそれをみせると、雪男は眼鏡を押し上げてまじまじと見る。そして、その後ひどくショックを受けたように黙りこんだ。最近は年をとって何があっても動じなくなってきたから、この表情は珍しい。昔はホクロが増えたといってからかうと真に受けてよくこんな顔したものだったが。
「まだあるかもしれねぇから、とってやるよ」
俺が雪男の頭をもっとよく見ようと顔を近づけると、雪男は逃げるようにソファの端へと身を寄せた。
「ちょっとやめてよ、兄さん。抜いたら余計増えるっていうでしょ」
「でもなぁ、結構めだつぞ、これ」
「本当に?」
俺が雪男の目の前で先ほどの白髪を振って見せると、雪男は言い返しもせずにしゅんと肩を落とす。なるほど、三十路半ばも近くなるとこんなことが本当に身に応えるらしい。
なんだか申し訳ないような気分になって、俺はソファの前側へと回ると雪男の隣へ座って慰めるように言った。
「まあ若い頃から苦労してもんなー、お前。いいじゃん。ダンディにみえて」
いいよいいよ、かっこいいよお前って言って頭を撫でてやろうとしたら、すごく嫌な顔をされた。
「誰のせいだと思ってるんだよ」
「え?誰?」
首を傾げると、深いため息をつかれる。なんだよ、俺のことかよ。
「ため息ばっかついてると余計に白髪ふえっぞ」
「そりゃ、兄さんはいつまでも若くていいけどね」
雪男にうらめしそうに見られて、俺は肩をすくめるしかない。
雪男は最近ますます俺との外見的差が著しくなっていくことに焦りを感じているらしい。
そういうことはふつう、俺の方が気にすることなんだろうが、だってしょうがないものはしょうがない。俺は悪魔なんだから。
初めの十年はきつかった。いつまでたっても十五歳から変わらない俺の外見を大人びていく仲間たちは奇異と同情の入り混じった目で見ていた。こんな俺でもその事実はそれなりにこたえた。
十五年過ぎたあたりからはもう周りも慣れてきてしまってむしろ俺に変化があることに違和感を持つみたいだ。この間ちょっと髪を切ったら周囲にえらい反応された。あんまり外見を変えるなってことらしい。
その中で雪男だけが、俺が変わらないことに、いやそれよりも多分自分と差がついてくることにだろう、まるで小さな子供が親から引き離されるのを恐れるように、怯える。
俺はなんだかな、と思って雰囲気を変えるようにちゃかして言った。
「普通の三十男に比べりゃ、お前、若く見えるほうだと思うけど」
祓魔塾の教師たち見てみろ。雪男と同年代のやつらはみんな親父だ。雪男はいっても二十代後半ぐらいに見える。肉親の欲目じゃないけど、二十年たってもうちの弟はイケメンだ。
「いつまで経ってもすべすべの肌しているような人にいわれたくないよ」
俺の気遣いを敏感に感じ取ったのか、雪男はソファの端から俺の方へと寄ってきて、くすりと笑う。
「すべすべって……俺、結構荒れてっぞ」
俺はぺたぺたと自分の顔を触りながら答える。最近悪魔祓いに忙しくちゃんとした食事がとれていないことが多くて、顔とかがさがさだ。忙しくても料理だけはきちんとすることがポリシーだっただけに、ちょっと情けない。
「いや、そういう意味じゃなくってさ……」
雪男は苦笑すると、するりと俺のシャツから手を差し入れ、わき腹をそっと触る。
「ひゃっ」
「こっちのこと」
さわさわと脇腹から腹筋の方へと手を動かし、それを胸元へと移動させる。
「ほら、ここの辺りとか。筋肉もあんまりつかなかったね。いつまでたっても十五歳のままだ」
胸元を上下に撫ぜおろし、感触を楽しみむようにそれを繰りかえす。時折突起に指先が触れて、俺の身体がびくりと跳ねる。
「お前っ、それ、おやじ発言……っ!」
「そうかも。最近兄さんとやってると、すごく若い子にいたずらしてるような気分になるよ。癖になりそう」
雪男の声が弾んでる。ちらりと雪男の顔を見たら眼鏡の奥の瞳がきらきらと輝いていた。酔っぱらいの親父がよくこういう顔をして女の子にセクハラしているのをみかける。そいつらと同じかよ。
俺はふと最近聞いた噂のことを思い出して、きりりと雪男を睨んだ。
「てめっ、そんなこといって……塾生に手ぇだすなよ!」
「出すわけないだろ。まだ子供じゃないか」
心外だ、という風に答える雪男に俺は疑いの眼を向ける。
「そういうけどな……最近、おまえ塾生たちになんて噂されてるか知ってるか?」
「なに?」
「奥村先生は若い子好きで、特に手のかかる子が好きだから問題児してれば、先生の気をひけるかも、だって」
「・・・・・・どこからそんな根も葉もないことを」
雪男はなんで最近厄介ごとを持ち込む女子生徒が増えたかようやくわかった、と溜息をついた。
「だいたいさ、その歳でまだ独身だから女子生徒に狙われるんだよ。早く結婚しちまえばいいのに」
「まだ、そんなこといってんの?いいかげんにしたら?」
雪男がむっとしたように顔を歪めて俺をじっと見つめる。雪男が言いたいことはわかってる。まあ、二十年来こうやって兄弟でべたべたしているんだから、雪男が彼女作ったり、結婚したりなんかできるわけない。
それでも俺は最近の、周囲からのさまざまなアプローチを考慮して提案してみる。
「だってさぁ、しつこいぐらい聞かれるんだぞ?生徒だけじゃなくて、適齢期の女の人にも。今日も任務中だっていうのに、しつこくさ、雪男くんにはおつきあいしている人はいるの?結婚の予定はあるの?って、うぜーんだよ。おまえが結婚しちまえばそんなこと聞かれずにすむだろ?」
「それはそうだけどね……けどそんな理由で結婚なんかできません。本当に好きな人とじゃなきゃ、結婚なんてできるわけないだろ」
「じゃあ、そーゆー奴、探せよ」
「探すまでもないよ、目の前にいるもの」
雪男は顔を近づけて、俺の額にこつんと自分のそれをぶつけると至近距離から真剣な瞳を向けてくる。
「なっ――」
俺はかぁっと顔を赤らめる。なんで、こういうこと素面で言えるんだよ、こいつ。
雪男が大人になって変わったことといえば、こういう歯が浮くようなセリフをストレートに俺にぶつけてくるようになったことだ。
昔はもっと婉曲的で、それで大体俺に伝わらずにいらいらと怒鳴りちらすことが多かったんだけど。まあはっきり言わなきゃ俺にはわかんないってこと、この二十年で学んだんだな。
「・・・・・・兄さんは?」
唇があとわずかでくっつきそうな位置で囁かれる。息が唇にあたってもぞもぞした。
俺は頭がくらくらするのを感じながらどう答えるかを考える。考えるが、この三十男に何をいっても勝てる気がしなかったので、しょうがなく、目の前の唇に自分のそれを押し付けた。
「っ・・・、ん、ん」
雪男はキスをしながら笑っている。口付けには性急さはなく、だが十分に官能的だ。舌で俺の唇をねっとりと舐め上げた後、それをするりと咥内へと忍び込ませ、歯列をなぞってから俺の舌を捕らえる。ざらざらしたそれを擦り付け合い、唾液で口の中がいっぱいになって俺が苦しくなってくるのを見計らって、解放する。俺が喉をコクリと鳴らしてそれを飲み下すと、ご褒美といった感じで軽く唇にキスをしてきた。
「ゆ、き・・・おっ」
もう、このキスだけで十分に俺は腰砕けで、とろんとした目で雪男を見上げると雪男はふっと微笑んで、俺の服に手をかける。
ボタンを器用に片手ではずしていき、もう片方の手は裾から滑り込ませて俺の肌を撫でさする。俺の快楽を途切れさせないようにする配慮。さすが、三十路。そこらへんの高校生とはわけが違う。
俺といえば、確かに雪男と同じだけの経験年数を経てきているというのに、なぜか十五の時と変わらず、雪男の愛撫にあっという間に高まってしまって、急かすように雪男の袖を引っ張った。
「なぁ、なぁ」
「なあに?兄さん」
「はや、く・・・なぁ、はやく、してくれよ」
何を早くして欲しいのか自分でもよくわかっていない。もっと直接的な愛撫が欲しいのか、このじりじりとした熱に侵された気分そのものを終らせたいのか、その判断はすべて雪男にゆだねてしまって、俺はあっという間に脱がされてしまった自分の裸をソファの上に転がすことしかできない。
「兄さんは堪え性がないんだよね」
雪男はゆったりとした動作で俺の身体を開いていく。スラックスを脱がせ、内腿を撫ぜながら痙攣したようにびくつく下肢をじっくり眺め、それからようやく勃ちあがりかけて小刻みに震える俺のものを触った。
「んんんっ・・・・・・はぁ」
じんわりと下肢全体に痺れが広がる。すぐさま擦り上げて欲しいという気持ちと、待てば待つほど快感が高まるんだという思いで、じれて頭がパンクしそうになる。
「ゆきお・・・ぁ・・・ん」
裏の筋を親指で擦られ、先っぽのカウパーを全体に広げられ、すべりのよくなった性器全体をきゅきゅっとすりあげられれば、俺は涙を流して腰を振る。
「あ、あ、ん・・・・あっ・・!」
一度目の絶頂はあっけなくやってくる。ぶわっと全身の毛穴がひらいたような感覚、そしてどっと押し寄せる倦怠感。
「ふ・・・・・・っ」
荒い息を吐いて、くたりとソファに身を預けていると、雪男が身体を起こして上から俺を見下ろした。
「僕、服脱ぐから、その間兄さんは自分の広げておいて」
あっさりそういって、自分のシャツに手をかける。俺はぼーっとした頭で雪男に言われるがまま、指を後ろに伸ばして入口を探った。頭の片隅では十分にひどいことを言われているのだとわかってはいたが、本能が勝手に雪男のいうことを聞く。俺は腹の上に先ほど吐き出した自分の白濁をすくって、それを後孔に中指で押し込む。慣れている場所なので抵抗なくそこは俺の指を受け入れた。
「んっ・・・んっ」
そんな俺を見下ろしながら雪男は服を脱いでいく。普段はきっちりと祓魔師の制服を身につけているから日に焼けてはいない。けれど、第一線の祓魔師の身体となればそれだけで見ほれるほどのものなのだ。厚みのある大胸筋、腹筋はしっかり割れてるし、上腕二頭筋の張りとか半端ない。俺にはいつまでたっても身につかないものがそこにある。
それだけじゃない、二十代半ばくらいから、雪男が脱ぐともうなんというかそれだけでフェロモンがだだ漏れるっていうか、まあ服着ててもだだ漏れてるんだけど、そんな甘い蜜に引かれた女たちが老いも若きもふらふら近寄ってきてしょうがないくらいの色気が雪男の身体を包んでいる。
「あ、あ、ふっぁ、やぁ・・・・・・ゆきっ」
そんな雪男の身体をみているだけで、俺は熱を上げる。雪男にみつめられながら、後孔に差し込む指を二本に増やして音を立ててかき回した。服をすべて脱ぎ捨てた雪男の下半身に視線を下ろすと、十分に硬度の保たれたそれが存在を主張している。
「兄さん、準備はもういい?」
「いっ、から、はやっ・・・も、まて、ないっ」
「そう」
雪男は容赦なく俺の両足を掴むと、大胆に広げて腰を入れてくる。後孔に狙いを定めて、そのまま腰を突き出し一気に奥まで差し込んだ。
「ああっ」
内壁の抵抗とそれを無視するように侵入してくる雪男のペニス。心臓がどくどくと脈をうち、頭に血を上らせた。全身が痺れ、呼吸が苦しくなる。
「兄さん、ちゃんと息して」
「っは、はっ、ぁあっ」
ぱちん、と軽く雪男に頬を叩かれ、ようやく息ができるようになる。息苦しさが、切なさに変わってじわりじわりと身体中を侵食してくると、もう、俺は我慢がならなくなって、雪男に抱きついた。
「やぁっ、も、あん、あ、んぅ」
「兄さん、いいの?」
「いっ、いい・・・・・・い、から・・・も、う・・・やぁっ!」
雪男が奥の方を揺さぶる。がんがんと内臓を揺らされ、気が遠くなる。内壁が雪男をもう離さないというようにぎゅっと締め付けた。そうすると、自分の中で雪男の大きさを感じ取りますます痺れが走る。
「もう、イッていいよ」
雪男の一言が優しく耳元に囁きかけられる。俺は緊張していた身体をふっと緩めすべてを解放するように声を上げた。
やるだけやって精根尽き果てた俺たちは、いいかげん寝るために場所を寝室へと移した。
寝室には昔の寮時代と同じように少し離れた距離にお互いのベッドが置かれている。その片方に雪男が横になったのを見計らって、俺は雪男にそろりと近づいた。
よしよし、目を閉じた。もうそろそろ大丈夫だろう。
「――っ、兄さん、ちょっと、なんで人のパンツずりおろそうとしてんの!」
だが、あっさりと雪男は瞼を開き、下半身に顔をうずめている俺の頭をぽかりと叩いた。
もう寝たかと思ったのに、たぬき寝入りか、お前。
「うん、まあ、一応確認をさ」
殴られた頭を撫ぜながら、俺は作業を再開する。雪男はそれを止めようとパンツを引っ張り上げるのでベッドの上ではなんとも情けない攻防が続く。
「何?!あんだけやったのに、まだ足りないわけ?悪いけど、僕、兄さんみたいに若くないからもう十分だよ」
「そうやって、兄さんを絶倫みたいにいうな!いや、絶倫なのが悪いわけじゃないけど!むしろ誇るべきことだけどな!」
「なにわけわかんないこといってんの。頭の中も成長してないの?」
「だから、ちげーっての!俺は確認したくて・・・・・・」
俺は真剣な顔をして、雪男のそこを指さす。
「下の毛にも白髪はえてんのかってこと!」
「えっ・・・・・・」
雪男は絶句して俺をみつめる。俺はいかに自分の行いに正当性があるかを主張した。
「下の毛はなー、髪よりも白髪になりにくいんだよ。それなのに、下の毛にも白髪あったら、もう男として絶望的じゃん?だから、そうなのかどうかを調べてやろうと思って。さっきやってる時は俺からみえなかったからさ」
「何?!さっきあんなに喘いでおいて、そんなこと考えてたの、兄さん?!」
「んー、頭の片隅でちょこっと。なー、みせろよ」
「余計なお世話だ!っていうか、そんなこと考えてんな!」
雪男は二重にショックを受けたというような顔をして、布団を被って俺に背を向ける。
どうやら怒らせてしまったようだ。いや、へこませたって方が正解か。
「なぁ、ホント、確認だけだから、な?」
背中を慰めるようにぽんぽんと叩く。本当にこの年代の男ってナイーブなんだなぁ。
すると、布団から顔を出した雪男が不機嫌そうに振り返ってじろりと俺を見る。
「なんで、そんなの確認したいんだ。それにあったらどうすんの。ていうか、僕の下の毛が全部白髪になったら、どう責任とってくれるの!」
雪男がまるでそうなったら全部俺の責任だといわんばかりの形相でいうもんだから、俺はいやいやそれはまったくの言いがかりだと思ったのだけども、ここは兄として、愛する弟に俺の気持ちをちゃんと伝えておくべきだろうと思ったので、全身全霊の愛をこめて雪男に答えた。
「大丈夫。今はデリケートな肌にやさしい陰毛の白髪染めがあるから。買ってきて俺が白髪染めしてやるよ」
これこそ、究極の愛のカタチだろ!
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