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sophora

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甘やかし【藤メフィ】

藤メフィは夫婦だよね。仲良し夫婦なんだよ。いちゃこらしてるんだよ、実は。
ってことがいいたかったようです。

藤メフィ一作目が非常に夫婦っぽいものだったので、ずーっとそれをひきずってます。
いや、原作によりのかっこいい獅郎とかメフィとかすっごく書きたいんですけどそれはまあ実力だからしかたない。書けないのはしかたない。

しかたないのでらぶらぶちゅっちゅしてるのを書いてます。双子のお父さんとお母さんであることは間違いないので!
 深夜、メフィストは浴衣姿でベッドのクッションに背を預けながら、興味もない雑誌のページをぱらぱらとめくっていた。当然、内容は頭に入ってこない。ただの暇つぶしである。
 暇つぶしなら暇つぶしで、別のことをすればいいのだが、夜が更ければついついベッドに上がってしまう。悪魔に必要な睡眠などたかがしれているので、ベッドに入る必要はないのだが、それでも夜になればこうやってベッドにもぐりこむのは長年物質界に身を寄せる故の習慣だろう。
 それにしても、とメフィストは思う。ここ一週間ばかりは、普段以上に夜が長く感じる。
 それが本来三日とおかずに現れる男の不在のせいなのだと、メフィストもうすうす気づいている。気づいてはいるが、その理由がいかんともしがたい理由なので、しかたなくこうやって暇をもてあましているのだった。
 その待ち人である獅郎は、先週我が子が暴れるのを止めに入った際、肋骨を骨折した。救急車で運ばれて、骨折それ自体は大した問題ではなかったのだが、日頃の任務で無茶をやっている身体を医者に診られたせいで、一週間の検査入院を言い渡されたのだ。
 救急車などに乗るからだとメフィストは呆れたが、一週間の入院を許可したのは確かに日頃その身体を酷使させているという自覚があったからだ。日本支部は常に人材不足で、聖騎士ともなると過重労働者とイコールである。
 それでも自ら許可した一週間がひどく長く感じるのは、あの口うるさい男の声が身体に染み付いているからだろうか。初めの三日目まではたまには静かでいいと思っていたはずなのに。ふっとそんな気持ちにかられたとき、その思いを聞き届けたのかどうかはわからないが、寝室の扉が勢いよく開いた。
「よう、帰ったぞ」
 待ち人きたる、である。騎士團の黒いコートを身にまとった獅郎がずかずかと寝室に入ってきた。
「ああ、おかえりなさい――って、藤本、貴方なんでこんなところにいるんですか?」
 あまりにも自然に獅郎が部屋に入ってくるので、どこかの新婚夫婦みたいなやりとりを一瞬しかけて、メフィストは我に返る。獅郎といえば、まるでここが我が家であるかのように、あたりまえのように扉をあけ、コートをそこらの椅子へ投げ捨てて、ベッドの端に腰を下ろすとブーツを脱ぎはじめた。メフィストはちょっとあわてて、獅郎に尋ねる。
「どうしたんですか、一週間ぶりなんですから、早く修道院へ帰って子どもたちに顔をみせてやったらどうです」
「んー、まあな」
 脱いだブーツを転がして、獅郎はベッドにごろりと横になる。ベッドはキングサイズなので大柄な男二人が寝転がっても不自由のない大きさだったが、それにしてもこのくつろぎようはない。
「今日、退院だったんじゃないんですか?」
「退院なぁ、明日っていってあるんだ。だから、今晩は帰る必要がねぇの」
 メフィストの質問に適当に答えて、獅郎は大きく伸びをする。ふぁぁと欠伸をすると、横を向いてメフィストの目をみつめる。それをみて、ああ、とメフィストは納得したようにうなずいた。なるほど、そういうことか。
「急に育児から解放されて、それが思ったよりもよかったんでしょう」
 今回の一週間は任務以外に子育てから解放されることがめったにない獅郎の久しぶりの休みだったのだ。本人は一週間もあの双子と離れていられるか、という気持ちだったのだろうが、逆に普段の育児疲れを意識させたのかもしれない。
 メフィストは獅郎の上に乗りかかって、獅郎の眼鏡をはずすと少し疲労感が残る眉間に唇を寄せ、ねぎらうようにキスを落とす。
「子煩悩な貴方でも、父親役は疲れますか」
「んー、疲れるってわけじゃねえんだけどな」
 そういいながらも獅郎はメフィストの首に手を回し、ぐっと引き寄せる。メフィストは抱き寄せられるまま、獅郎の背中に腕をまわして、もう片方の手でよしよしと頭を撫ぜた。
「子育てが嫌なわけじゃねぇんだが、なんだかなー、たまぁに」
「こうやって、甘えたくなる?」
 くすり、とメフィストが笑うと獅郎は眉を寄せる。それでも否定しないということはそういうことなのだろう。
「しかたありませんね。甘えたいのなら、好きなだけ甘えさせてあげますよ」
 そういって、メフィストは頬に優しくキスをして、背中をぽんぽんと叩いた。まるで母親が小さな赤ん坊にするみたいに。
 うーっと獅郎は小さくうなるが、それでも抵抗はしない。メフィストは含み笑いをする。この男がこんな姿をみせるのはひどく珍しい。普段なら、照れるか、うっとうしがってメフィストの手から逃れようとするのに。
「まあ、貴方の場合、父親役、母親役両方を担っているのですからね。少し荷が重いんじゃありませんか」
「だから、お前が母親役やってくれりゃいいのにっていつも言ってんじゃねぇか」
「冗談じゃありませんよ。私に料理でも作らせる気ですか?」
「・・・・・・無理だな」
「無理でしょう」
 一度戯れにメフィストの作った料理を食べさせられたことがある獅郎は絶望的な顔をして首を振った。
「それに、私には別の役割がありますし」
「・・・・・・うん。まあ、そうだな」
 低くつぶやいたメフィストに獅郎は表情を改めて、メフィストの胸元に顔をうずめた。
 あの双子を殺さずに育てると選択した日からお互いの役割は決まっていた。獅郎があの子どもたちの養育を担うかわりに、メフィストが騎士團や悪魔どもから双子を守る。
「お前は、十分役割を果たしてる。俺はどうだかわかんねぇけどな」
 どうやら本当に子育て疲れをしているらしいと、メフィストは小さく笑った。うちの子どもたちは世界一かわいいと毎日のように叫んでいる男が、こんなことを言うなんて。
 すこし、燃料を投下してやる必要があるかなと思って、メフィストはサイドテーブルにおかれていた小さな便箋を取って、ほら、と獅郎の目の前に広げた。
「貴方は十二分に役割を果たしてますよ」
 獅郎が来たらみせてやろうと思って、とっておいたものだ。獅郎はその便箋に大きく書かれた拙い字を読む。
「『お父さんが退院しても、しばらくはかんたんなお仕事だけにしてあげてください。ちかごろ、肩がこるとか腰がいたいっていってるし、年なんだと思います。どうぞよろしくお願いします』――なんだ、これ?」
 驚いたように瞬きを繰り返す獅郎に、メフィストは笑って答えた。
「双子の片割れが持ってきたんですよ。まだ私の部屋に自らこられる立場じゃないのに、どういうつてを使ったんだか、わざわざ理事長室までね」
「ったく、雪男め」
 というものの、獅郎の目尻は情けないほど下がっている。どうせ、あの小さいくせに大人ぶった、可愛い子どものことを思い出しているのだろう。
「ね、貴方の父親ぶりも捨てたものじゃないでしょう?親の心配ができるいい子に育ってるじゃありませんか」
「んー、まあな」
 はっきり肯定しないのは照れが先立ってのことだろう。だが、よっぽど嬉しかったのか、そのメモを大事そうにクッションの下へ入れると、感謝の印かちゅっと音をさせてメフィストの唇を吸う。
「これ、貰っていってもいいよな」
「ええ、どうぞ」
「それと、一週間ぶりだから、このままやってもいいよな」
「はいはい、好きにしてください」
 先ほどの疲労感はどこかへ吹っ飛んでしまったのか、まったく元気を取り戻した獅郎は早速メフィストの浴衣に手をかけている。メフィストは両手を広げ、無防備にベッドに横になった。するりと帯を抜き取られ、肌けた襟元に手を入れられて艶かしく身体を震わせる。そして、見下ろしてくる獅郎に官能的な視線を送った。その癖、指先はこの先への期待と不安をしめすかのように獅郎の腕をさまよわせる。まさしく、それは獅郎の理想とする誘い方で――。
「なぁ、もしかしてこれも甘やかしてくれてるのの、延長か?」
 ふと手を止めて、獅郎が眉を顰めて聞くので、メフィストはやっと気づいたのかというように笑い声を上げて答えた。
「それ以外のなんだと思ってるんですか」
 ――私の役割には貴方を甘やかすことも含まれているんですよ。
 そう耳元に囁いたら、獅郎はまるで子供みたいに唇を尖らしたので、メフィストはますます笑ってその唇に自分の唇を押し付けたのだった。

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プロフィール

HN:
如月 ちょこ
性別:
女性
自己紹介:
■ 青の祓魔師二次創作
 テキストサイト。腐向け。
■ 雪燐中心です。
   藤メフィもあります。
■ 書店委託開始しました。
   詳細はofflineで。

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