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sophora

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【R18】千年の孤独【藤メフィ】

ちょっとした出来心ではないんですが、藤メフィブームが怒涛の勢いでやってきたので、ちょっと勢いあまって書いてみた。

今頭の中でカプがカオスってて、どれでも食えるような入れ食い状態です。やばいね!

R18なのでお気をつけを。ぐだぐだ長めです。
「・・・・・・なんなんですか、ここ」
 さわやかな新緑の季節、田植えが終ったばかりの畦道を、こんな田舎には似つかわしくない男が二人、肩を並べて歩いていた。
「のどかでいいところだよなぁ」
 一人はシルクハットに真っ白な衣装、片手にカラフルな傘と、まったくもって奇妙で道化のような格好をし、もう一人は対照的に漆黒のコートを身に着けている。
 おそらく誰かが道で通りすがれば、奇異の目で二人をみただろうが、生憎現在二人がいる場所はただでさえ人里離れた山奥であったし、それに近頃では『よくないものが出る』という噂がたって、村人はこのあたりに近づかない。だから、二人はそういった目を気にすることなく、ぐだぐだとたわいのないことを話ながら歩いているのだった。
「いいところって、なんにもないじゃないですか」
「何にもないところがいいんじゃねえか。これが日本のわびさびってやつよ。まあ、悪魔のおまえにはわかんねえだろうな、メフィスト」
 揶揄するように黒づくめの男は唇の端を上げた。馬鹿にされたことがわかったのか、メフィストと呼ばれた男はむっとしたように眉をよせる。
「いっておきますけどねぇ、私の日本文化への造詣をそこらへんの親日家と比べてもらっては困りますよ、藤本」
「おまえの場合、主にオタク文化への造詣だろう」
 藤本は呆れたように肩をすくめ、隣で不満をたらたら述べている連れ合いを無視してさっさと歩を進めた。
「待ちなさい、藤本!」
「だいたいなぁ、おまえがついてくるっていったんだろうが」
「こんなになんにもないところだと思わなかったんですよ」
「俺はそうとう田舎にいくっていったんだぜ?」
「情緒溢れる温泉宿とか、秘境の滝とかあるような田舎だと思ったんです」
 だから、ついてきたんですけどねぇ、とメフィストはため息交じりで答える。
 それをちらりと見て、藤本はもっと深いため息をついた。
 今回この山奥への任務が決まったのは数日前。他の祓魔師は生憎誰も彼も予定が入っていて、手の空いているものがいなかった。たまたま大きな任務を片付けたばかりで暇を持て余していた藤本は、大した任務ではなさそうだという話を聞いて、それなら俺がさっさと行って片付けてきてやるかと言ったのだが。
「支部長自らくっついてくるって、おかしいだろ」
「おもしろそうだったもので」
 メフィストは喉を鳴らして笑う。どうせいつもの気まぐれなのだろうが、それにつきあわされる方の身にもなってほしいと思う。まあ、長いつきあいなのでそれも慣れてしまってはいたが。
「おまえの取り巻きがうるさくしてるんじゃないか?置いてきたんだろう」
 普段からメフィストが正十字学園を出る時は物々しい護衛がつく。元はヴァチカン本部から送られてきた精鋭祓魔師らしいが、親衛隊とあだ名されるそれが今やメフィストの子飼いになっているという話は日本支部における公然の秘密だ。
「せっかくあなたと二人で出かけられるというのに、邪魔ものは必要ないじゃないですか」
「おまえ、それ、あいつらに直接いってねえよな」
「いいましたよ?それがなにか?」
 ああ、きっと帰ったらまたあの黒づくめの集団にねちねちと厭味を言われるのだろうと思って、藤本はちょっと気がめいった。
「だいたい、あなたがいてどうして護衛がいるんですか。最強の聖騎士がここにいるんですよ?なまじのものなど相手にならないでしょう」
 確かにそれは正論で、それをいうならこの目の前の悪魔に護衛をつけるという方がそもそもおかしい。この悪魔にかなうものなど、すくなくともこの物質界にはいないはずだ。
 メフィストの虚無界における正式な地位と立場を知っている藤本は、この悪魔がいったいどんな酔狂でこんな生活を送っているのか疑問に感じないわけではなかったが、それをあえて口にすることはなかった。
 相手は悪魔。人間の理解の範疇外にある。それを踏まえて接すれば、お互いの利害が一致している間はよき友になれる。
 それが祓魔師としての藤本のポリシーであり、それを守ってきたからこそ聖騎士という地位に登りつめたのだが、どうもこの目の前の悪魔に対してだけはそれが崩れてしまうことが多々あって、時折藤本を悩ませるのだった。
「ああ、藤本。あそこじゃないですか?」
 藤本が考え事をしている間に目的地についたようだ。メフィストが隣で指し示す先に視線を移す。そして、藤本はそこに今回の任務対象である、黒く歪んだ人の影を見たのだった。

  



   「悪魔、ではないんですね」
 ずいぶんと立派な松の大木の下に、木の影にしてはいやに黒く歪んだ気配がある。
メフィストはその黒い影に近づくと、じろじろとぶしつけな視線でそれを観察した。
「ああ、人の怨念の塊、いわゆる幽霊ってやつだな。人の死に際の念が強いと年月を経て磁場を作る。これもそういったものだろう」
 そうメフィストに説明しながら、藤本は目的のものを探した。辺りをみまわすと、すぐにそれは見つかった。
「これだな。ほら、ここに塚が立てられていたんだろうが、何かのはずみで壊されちまってる」
 藤本がただの瓦礫にしかみえないものを手にとってメフィストにみせる。メフィストは興味がなさそうにそれを一瞥してから、不愉快げに眉を寄せて藤本に尋ねた。
「この幽霊がそれによって悪さをしはじめたというのはわかりました。しかし、悪魔祓いではない任務をなぜ引き受ける必要があるんですか。こんなのはうちの仕事じゃない。ましてや聖騎士がでるようなものでもありません。拝み屋にでもやらせておけばいいのですよ」
「まあ、そういうなって。こういうのも放っておくととんでもない大物引き寄せることだってあるからなぁ。それに――」
「それに?」
「この、幽霊についての逸話がちょっと気になってな」
 そういって、藤本は今回の依頼を受けるにあたって聞いた、このどこかもの悲しげな霊についての話をメフィストに語って聞かせた。
「約千年前・・・・・・時は平安、この村にひとりの姫君が落ち延びてきた。都の政変に巻き込まれて、一族郎党皆殺し、ただひとり姫君だけは助けられてこの村にやってきたんだな。貧しい村での暮らしは姫君にとっては苦しいものだけと思われたが、それは違った。姫君は村の若者と恋に落ちたからだ」
「ほう」
 少し興味を惹かれたというようにメフィストが藤本をみる。
「若者は甲斐甲斐しく姫の世話をした。それは姫にとってははじめての恋だった。二人はひっそりと幸せに日々を送っていたが、それは長く続かなかった」
「と、いうと?」
「村に飢饉がやってきてな。食べるものに困った村人たちは姫君を都に差し出して幾ばくかの報奨金をもらおうと画策した。それを知った若者と姫は村から逃げようと決心をする。若者は準備が出来たら後を追うといって、姫を先に逃がした。待ち合わせの場所を村はずれの松の木の下と約束して」
 藤本が空を仰いだ。そこには太くて立派な松の木が悠々と端坐している。メフィストもつられるように見上げた後、視線を戻して藤本をうながした。
「それで?」
「結局、その若者は村人にみつかっちまって、捕らえられ約束の場所にはいけなかった。姫君の方は松の木の下でずっと待っていたんだが、いつまで経っても若者はやってこない。このままでは村人にみつかる。でも一人で逃げたところでどうしようもない。だから小刀で自分の胸をついてそのまま自害した」
「――ありがちな、昔話だ」
 メフィストは無感動にそう結論付けた。たしかに、と藤本は苦笑して手にしていた塚の石の一部を放った。
「ありがちな話だな。けどな」
 藤本は口の奥で小さく詠唱を始めた。いつもの悪魔祓いの時のような荒々しい力強さはなく、ミサで聖書を読むときのような静かで穏やかな詠唱だ。
 黒い影に手をかざし、瞼を閉じて詩篇の一部を唱える。すると、黒いもやのようなものでしかなかったその影が、徐々に輪郭をとり、黒々とした髪が美しい女の姿になっていく。
 黒い影だったときは、なにやらどろどろとおぞましく、悪霊ともいえる様子であったのに、藤本の詠唱を浴びた後では光の中に佇む蜃気楼のようにも見えた。白んだ影の表情はうまく読み取れない。ただ、どこかその姿は悲しげだった。
「姫が自害して、村人はその怨みを畏れた。塚を建て、供養をして、長い年月が経ってその存在も忘れ去られた。そうして彼女に残ったものは」
 藤本は影の前に立って微笑んだ。それをメフィストはじっとみつめた。
「村人への怨みでも若くして命を絶った無念でもなくて、ただ、寂しいという気持ち。もういちど若者に会いたいという気持ち。それだけだった」
 メフィストは黙ったまま、藤本が彼女に話しかけるのを見ていた。そして彼が、本当の意味で聖騎士であると言われる所以を今まさしく目の当たりにしているのだと思った。
 人の枠を越えて、人ならざるものと、この男は簡単に通じ合う。それがどれほど恐ろしい能力なのか、本人は知らない。
「なあ、もうそろそろ会いにいきたくはないか?おまえさんの大切な人のところ。こんなところで待っていてもいつまで経っても会えないぞ」
 藤本は語りかける。神父としての信者に対する説教というよりは父親が幼子に言い聞かせるといった口調だった。
 白んだ影がふわりと揺れたように感じたのは、メフィストの錯覚か。メフィストが瞬きを繰り返す間に、藤本はまた、詠唱を始めた。ゆるゆると謳うような声音で。
「俺がちゃんと送ってやるから、な?」
 微笑んだ藤本の手の先で、その影はぱっと弾け飛ぶように消えた。メフィストはそれを追うように空を見上げる。目の前の現象がそういうものではないと知っていたが、どこか彼女の魂が彼女を待つ魂のあるところへと昇っていったような気がしていた。
「・・・・・・器用なものですね、拝み屋のようなこともできるんですか」
「俺の本業は迷える魂を救うことにあるんでね」
 視線を藤本に戻したメフィストに藤本がにやりと笑う。その顔がどうにも気に食わなくて、メフィストは思いっきり藤本の顔を殴りつけた。




「そういえば、子供たちはいいんですか」
 当初望んだ老舗の温泉宿とはいかなかったが、それなりの体裁を整えた宿の一室で、メフィストは自分の上に覆い被さってこようとしている藤本に尋ねた。
 よつばいになり、今まさしく藤本を受け入れようとしているのに、まったく空気を読むということを知らないメフィストからの問いに、藤本はあっさりと答えた。
「修道院のやつらがみてくれてるさ」
 いつもどおり、といって藤本はメフィストの後孔に己の猛った性器をぐりぐりと押し付けた後、そのままぐっと先端を呑み込ませた。
「アッ」
 慣れた身体は一瞬の抵抗を示すだけで、あっさりと藤本を受け入れる。馴染ませるように入り口あたりを行き来きさせる藤本の腰骨がメフィストの臀部にあたり音を立てる。メフィストは腰を高くかかげ、自分のよいところに藤本のペニスがあたるように、位置を変えた。
「うっ、あっ、あ、ぁ」
「俺が・・・いない、のは・・・・・・いつもの・・・ことだし、なっ・・・うまくやってる、さ」
 荒い息の中、藤本が先ほどの質問の続きに答える。メフィストは首をまわして藤本をみると、喘ぎつつもさらに問いを重ねた。
「で・・・も、ぁ・・・あれ、でしょ。あの子供、ほおって・・・おいた、ら・・・ぅっ・・・まずいっ、です、よね」
 行為の最中、途切れ途切れになる言葉で会話するのは長年身体を合わせてきた二人の癖のようなものだ。はじめの頃の、無言でお互いを貪るような時期はとうの昔に過ぎ去り、日常の会話をする延長上でセックスをするので大概がこういうことになる。
「まだ・・・だいじょう、ぶ。おまえの封印・・・きいてる、から」
「ぁ・・・ん、そこ、いっ・・・・・・ぁあっ」
 前立腺の周囲を集中的に攻められ、メフィストは会話をとぎれさせた。藤本も先にイかせてしまった方が早いと思ったのか、ぐっとメフィストの腰を引き寄せると、奥に向かってペニスを叩きつける。
「い・・・ぁ・・・ふ・・・かっ」
「ほら、いっちまえ」
「ああああっ――」
 メフィストはがくがくと身体を揺らして、シーツの上に白濁の液を漏らした。内壁がぎゅっと己を犯していたものを締め上げる。藤本の精液がどくどくと体内に放たれるのを感じて、メフィストはさらに絞りあげるように尻に力を入れた。
「くっ・・・・・・こら、メフィスト!」
 痛みを感じるほどだったのか、後頭部を軽く叩かれる。そこで、ようやく力を緩めてメフィストは藤本を解放した。
 どさり、とそのまま藤本はメフィストの上に身体を預ける。決して軽いわけではないが、メフィストよりも小柄である藤本に体重をかけられたところで大した痛手にはならない。そもそも、メフィストは悪魔なので、この程度のことで肉体的な苦痛は感じない。
 だから、メフィストはそのまま背中に藤本の体重を受け止めた。おかしなことにこの男と関係を持つようになってから、行為の最中よりも事後のこういったちょっとした時間を愛するようになった。不思議なものだ。人と深く交わるようになって、自分も人に近づいていっているのかもしれない。
「というか、なんであいつらのこと、いきなりいいだしたんだ?今まで俺がおまえとこうやって出かけてる時だって一度もそんなこといわなかっただろう?」
 突然、藤本が先ほどの会話の続きを再開した。余韻というものを一切楽しまない藤本に、メフィストはちょっと鼻白む。むしろこの男の方がよっぽど即物的で悪魔のようだ。
 メフィストは仕方なく、身を起こした藤本に合わせて自分もくるりと身体を反転させると仰向けになった。
「重要な任務なのであれば、しかたありませんよ。けれど、今回は緊急性もない、別にあなたじゃなくてもいいような簡単な任務、あの子供たちを放って赴くほどのものではないでしょう」
「ほぉ、そんなに燐と雪男のことが心配なのか。メフィスト、おまえにもとうとう母性本能がめざめたか?」
「ふざけないでください」
 藤本が話しを逸らそうとしていることがわかったので、じろり、ときつく睨みつけてやる。藤本は肩をすくめてため息をついた。
「わかってるって。おまえはこんな簡単な任務に俺が興味をしめしたってことに納得いってないんだろう?」
 ふーっと長く息を吐いて、藤本は困ったというように頭をがしがしと掻いた。
 メフィストにもわかっている。藤本にとって任務の難易度はさほど大きな問題ではないのだ。聖騎士までになったにもかかわらず祓魔師であることよりも一介の神父であることを優先したがるような人物だ、ただの人助けも上級悪魔を祓うことも藤本にとっては同じレベルで重要な案件なのだ。
 けれど、同時に藤本はきちんと物事の優先順位をわきまえている。自分の望みとは別に自分に与えられた役割の重要性をわかっている。聖騎士としての役割、サタンの炎を宿した子供を監視し育てること、どの時点でどれが優先されるべき事柄なのかなど、いまさらメフィストが諭すまでもない。
「まあ、今回はな・・・・・・ちょっと特別っていうか」
 言うか言わないか、いまだ戸惑っているといった様子で藤本がぼそぼそとつぶやく。メフィストがぎりっとその腕に爪をたてると、観念したというようにメフィストを見て笑った。
「この話聞いたときになぁ、千年前の霊だって聞いて。そうか、千年かと思ったらおまえのことが思い浮かんでな」
「私ですか?」
 きょとんとしたメフィストに藤本は自嘲したような笑みを浮かべ、頬にそっと手を伸ばしてくる。
「ずっと千年もひとりで待たせてるなんて、俺には耐えられそうにもねえなぁってさ」
 藤本はそろりとメフィストの頬を撫ぜた後、手を後頭部へ滑らせてぐいっと頭を引き寄せる。そのまま藤本に頭を抱えられたような形になって、メフィストは耳元で囁かれる藤本の告白を聞いた。
「ひとりでなぁ、寂しい寂しいってな。自分で終らせることもできないで、ずっと千年も。そんな孤独ってあるかよってな」
 メフィストは藤本の告白を聞きながら、不意にわき上がった熱いものをぐっと飲み下した。呑み込まなければどうにかなってしまいそうだった。
 この叫びだしそうになるこの想いはなんなのだろう。自分は悪魔なのに、悪魔なのに。
「わ、わたし、は、たとえ千年ひとりであっても寂しくなどありませんよ。悪魔ですから」
 藤本の胸元に向かって、メフィストは努めて冷静にそういった。いったつもりだった。
 藤本はそうかぁ、と少し笑ったようだった。
「おまえがそういうんなら、そうなんだろう。けどな」
 藤本はメフィストの顎をくいっと持ち上げ、じいっと瞳の奥をみつめてくる。何かを探しているのだ、とメフィストは思った。それはメフィスト自身も知らない、心の奥底にある真実なのか。
「もしな、千年たって・・・・・・寂しくてな、それを自分じゃ終らせることができなかったら・・・・・・俺がおまえを殺してやるよ」
 息を呑んで、メフィストは藤本を凝視した。視線をからみ合わせ、本心でそう思っているのだとわかった途端、おかしさがこみ上げた。おかしくて、おかしくて、ひどく悲しい。
 メフィストは顔を歪ませて笑った。なんということをいうんだ、この男は。
「千年たったら、あなた、姿も形もこの世にないじゃないですか。どうやってやるつもりです?」
「そうだな、神様に頼んで、天使にでもなっておまえを迎えにくるかな」
「なんですか、それは」 
 自分でも無茶をいっていると思ったのだろう、ハハっと笑って藤本はメフィストに触れるだけのキスをする。
 藤本は冗談めかして笑ったが、メフィストは笑えなかった。
 神にすら愛されたこの男にはそんな夢物語も可能であるかもしれない。そう思わせるような力がこの男にはある。
 悪魔である自分が、力なき人間の言葉を信じてしまいたくなる、そんな気持ちにさせる力がこの男にはある。
「そうですね・・・・・・じゃあ、そのときのために」
 メフィストは藤本にキスのお返しをしたあと、唇を耳元へ寄せた。
「私の致死節をあなたにお教えしましょう」
「メフィっ」
 驚いたように身体をこわばらせた藤本の身体をきつく抱きしめて、メフィストはこの長い生の中で誰にも打ち明けたことのない秘密をそっと藤本の耳元へ流し込んだ。
「なんてことすんだよ、おまえは」
「くくくっ、藤本、ひどい顔してますよ、あなた」
 藤本は耳元を抑え、嫌な顔をする。それを見てメフィストはやっと心から笑い声を上げた。
 自分の心臓を刺す銀の剣を相手に押し付けた、その爽快感。もしくは、口に含めば死をもたらす劇薬を煽って口付けたような背徳感。そして、自らの亡骸を抱き上げてもらったような安心感。それらすべてが体中に広がる。
「千年したら、あなたが殺しにきてください。その致死節でね」
 


 たとえ、千年の孤独が自らを苛んだとしても、この約束があるかぎり、千年後のその日を夢見て自分は生き続けるだろう。

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プロフィール

HN:
如月 ちょこ
性別:
女性
自己紹介:
■ 青の祓魔師二次創作
 テキストサイト。腐向け。
■ 雪燐中心です。
   藤メフィもあります。
■ 書店委託開始しました。
   詳細はofflineで。

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