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【雪志摩】片恋未満【燐←雪←志摩】

あの以前いっていた雪男がひどい話です。
誰得でもありませんよ。注意しましたよ?
大丈夫な方だけお願いします。R18でもありますからね!
志摩はかわいそうです。おちもいみもないです。
たぶん志摩じゃなくても雪モブとかでも行けた話ですが、
そんなことしたらもっとひどいこと雪男はするので
相手が志摩でまだ配慮しているということなのだと思います。
そんな話…だよ?
 初めはただのあこがれだった。
 そう、あれだ。イケメン野球球児やゴルフプレイヤーを世間がもてはやすのと同じ感覚。
 同じ年なのにずいぶん大人びていて、自分の目指すものの遥か先を行ってて、そんで成績優秀顔も整ってて、女の子にはもてまくり。なんやのそれ、うらやましとつくづく思い、何をどうしたらそうなれるんやろとその次に思い、出来るならお近づきになりたいわぁと思ったりした。
 近場には十分尊敬する対象はすでにいたのだけど、小さい頃から一緒で兄弟みたいに育って、大人たちから命をかけて守る存在なのだと刷り込まれたその人に対する想いとはやっぱりちょっと違ったのだった。
 まあ、実際お近づきになりたいという気持ちの裏には、自分もあんな風になって女の子にもってもてになりたいという下心があったからなんだけども。
 でも、その人に近づく方法をクラスメートの女子生徒から借りた少女漫画を真似したあたりから、すでに大きな間違いがあったのかもしれない。
 クラスメートの女子がその漫画をみせながら「あこがれの人の気を惹くにはね、その人の好きな人とか大切な人にちょっかいかけるといいのよ」というから、そんなん、逆に嫌われてしまうやろと返したところ、「何言ってるの、そこからこっちを向かせるのがテクニックってものでしょう」と訳知り顔で返された。
 テクニックってなんや、それをそもそも聞いとるんやないかい、と突っ込みはいれない。その子も十分に可愛い子だったのだ。




 その話を聞いた後、志摩は幼馴染たちからいわせると大して大きくない脳内で必死に作戦会議を行った。
 あの人の大切な人ってゆうたら、やっぱり奥村くんやな、と志摩は目星をつける。
 志摩と奥村燐はすでに塾生の中では十分仲のよい関係あったので、これはすぐに達成できそうな課題だなと思った。あこがれの人の大切な人にちょっかいをかける、というところまでは、だが。
 そういうわけで、志摩はある日、悪魔薬学の授業が終った後、脱兎のごとく席を立って燐に近づいた。
「奥村くん、あのな、この間ゆうてた本やけど。早速手に入ったから奥村くんに先に回してあげるわ」
 志摩は燐に肩に手をまわして教室中に聞えるぐらいわざと大きな声を出した。ちょっと大きすぎる声だったかもしれない。燐の隣に座っていたしえみは目をぱちくりさせている。
「ええっ?!マジかよ」
 燐は志摩から手渡された紙袋を見て、中身が想像ついたのか途端目をきらきらさせる。中身はただのエロ本だ。
「ホント、先に見てもいいのか?」
「ええよ、俺、その手のいっぱいあるから、お先にどうぞ」
「うわぁぁ、志摩、お前ほんといい奴だよな。ありがとな」
 燐は今にも飛びついて、顔じゅうにキスをしたそうな勢いで志摩をみる。
「そんな大げさな。こんくらいのこと、なんでもないやん」
 志摩は燐に笑い返しながら、背中からびしびしと感じている鋭い視線に冷たい汗が流れ出すのを感じていた。
 もちろん、授業を終えた後の雪男が部屋を出ずにこちらをうかがっているのは確認済みだ。
 大丈夫、ここまでは想定内。この優秀な悪魔薬学の講師が兄に対して異常な過保護さをみせるのは周知の事実。たとえ、その視線が、志摩を射殺しそうなものだったとしても。
 案の定、目的を達成し終えた志摩が燐から離れると背後からぞっとするような低い声がかけられた。
「志摩くん、すみませんがこの後少しお話できますか。昨日提出してくれた課題について話があるので」
 ゆっくりと振り向いた志摩がその時の雪男をみて逃げ出さなかったのは、それが作戦どおりだったからではなく、恐怖のあまりその場に凍りついてしまったからだ。
「じゃあ、志摩くん。またあとで」
 眼鏡を光らせた雪男を見て、あいつ、仕事熱心だよなーと呑気にいうことができたのは、言うまでもなく彼の最愛の兄だけだった。





「そこ、座って」
 連れてこられたのは、塾講師用の職員室から離れた空き部屋だった。
 てっきり職員室の方へと連れて行かれると思っていた志摩は、複雑な気持ちになる。
 この場合、やったと喜ぶべきなのか、眼鏡の奥に得体の知れない光りを宿す男に怯えるべきなのか判断つかず、志摩はぎくしゃくと勧められるがまま、木製の椅子に腰をかける。
「さあ、志摩くん。賢い君のことだから、なぜここに連れてこられたか、わかってますよね」
 雪男は立ったまま志摩を見下ろすと目の前の机をとんとんと叩いた。志摩はその指先に一瞬見とれる。形のいい爪、きちりと切られたそれは雪男の性格をあらわしている。やっぱイケメンは指先までちがうんやなぁと志摩は悠長なことを考えた。
「志摩くん?聞いていますか?」
 再びとんとん、とやられて、志摩は顔を上げた。窓辺から差し込む夕日に照らされて茜色に染まる雪男の顔が目の前に近づく。いつもの見慣れたはずの顔が普段よりもくっきりして、そして信じられないぐらい間近にある。志摩は息を呑んでしばらくそれをみつめた後、はっとして目を逸らした。
 ――なんや、今の。なんなの。今、俺、どきっとしたで?どきってなんなの。うわっ。
 志摩がしばし混乱して、右往左往(頭の中で)していると、頭上にふーっと長いため息を聞いた。
「何か僕にいいたいんでしょう?」
「えっ?」
 志摩がようやく雪男と視線を合わすと、眼鏡を押し上げて雪男は普段の教師らしい口調から少し崩れた話し方で志摩に聞いた。
「兄さんをだしに使って、僕の注目を引いて。志摩くんが兄と仲がいいことは知ってますけど、別にあんな風に話し掛ける必要はない」
「なんや、ばれとったんですか。さすが、若先生や」
 はーっと志摩は尊敬したといった表情で雪男を見た。雪男は眉を寄せて首を振る。
「何言ってるんですか。あの教室にいたみんな気づいてますよ。あのバカ兄以外はね」
 ふうともう一度ため息をついて、雪男は志摩の正面の椅子に座る。かき上げるまでもない短い髪に指を差し入れて、志摩に視線を送ってくる。
「それで?僕に何か用でも?」
 そうや、それが本題や、と志摩は本来の目的を思い出した。夕暮れ時の教室に二人っきりという少女漫画でありがちなシチュエーションに酔っている場合ではなかった。
「俺は――」
 志摩はそう切り出して、ふと言葉を止めた。雪男が促すようにうなずく。それに後押しされるように再び口を開いたが、二の次が聞けず、ぽかんと口を開けたままになってしまった。
――俺は、何を言いたいんやっけ?えっと、そうや、この人は、頭もよくて顔もよくて、最年少祓魔師とかにもならはって悪魔薬学の天才とかまで言われて、もってもてで、俺には手の届かんような遠くにいはって。そんな、そんな奥村先生は、どうしたら――。
「どうしたら、先生は俺に興味もってくれはります?」
「・・・・・・えっ?」
 ぽろりと志摩の口からでた言葉に、雪男はぽかんと口を開ける。
 どう考えても今までの文脈から出てくるような言葉ではない。ということを、雪男の表情から志摩も気づいて、かっと顔を赤らめて訂正した。
「いや、違うくて!そうやなくて、先生が、やなくて、俺が、俺が先生に・・・・・・」
 言えば言うほどドツボにはまるということはこのことだ。志摩はありえないぐらい顔を赤くして、口をつぐむと上目使いで雪男を見た。
「・・・・・・わかりました」
 雪男はこほん、と咳払いをひとつして腕を組んで志摩を見下ろした。驚いていたのは一瞬で、もうすでにいつもの教師然とした穏やかな笑顔を浮かべている。
「つまり、志摩くんは僕に興味があるということですね。それで?」
 自分に興味をもたれていることについてはどうでもいいのか、あっさりとスルーする雪男に志摩は少なからずダメージを被る。ダメージを被っているということがどういうことを意味するのか、この時点の志摩は十分に理解できていない。ただ、威圧的に見下ろす雪男にうながされるまま、ぼろぼろと口から本心がこぼれ出る。
「そやから・・・その、先生のことが、もっと知りとうて」
「僕のことが知りたいんですか。どうやって?」
「どうやってって、いわれても・・・・・・」
 ひどく冷ややかに問い返されて、志摩はうろたえる。志摩が迷っているうちに雪男がせっつくように言葉を重ねた。
「僕のことを話せばいいんですか?好きなものとか、嫌いなものとか?どんなことをして週末は過ごしているのとか、好きな人はいるのかとか、どんな風に育ってきたのかとか、そういうことを」
 すらすらと雪男は答える。それが、今まで女子生徒たちから散々聞かれてきた質問なんだとようやく気づいて、志摩は勢いよく首を振った。
「違う!そうやない。俺はそんなことどうでもいい。そんなんやなくて!」
 雪男に興味がある、周りの女子生徒と一緒にされたくはなかった。では、どう違うのか、違うといいはるのはなぜなのかなど、今の混乱した頭でわかるはずもない。
「俺が知りたいんは・・・・・・」
 少なくとも、形通りの表面的な情報ではない。彼を取り囲む女子生徒たちが欲しがるような彼のプロフィールなんてどうでもいい。
 そうではなくて、穏やかな人当たりの良い笑顔の裏で本当はいつも他人を拒絶している、彼の兄だけにしか見ることの許されていない、本当の彼自身を、それを見てみたい。
「俺が知りたいんは――」
志摩は立ち上がって雪男の瞳を正面から見た。無機質に自分を見る瞳をどうにかして、違う色に変えたいと思った。
「ホンマもんのあんたや――」
 志摩は机に置かれたままだった雪男の指先に自分の手を重ねると、ゆらりと動いた雪男の瞳をみつめながら、指先を絡めた。







「いやぁ・・・・・・いややっ・・・そこ、せんせぇ、だめっ」
 奥深くを抉られるように突き上げられて、絶頂へと押し上げられる寸前の状況で志摩は息も絶え絶えになりながら、ひたすら射精することだけを耐えた。
 祓魔塾のもうどれだけ使っていないのかわからない空き教室のひとつ。埃の溜まった机にしがみつく形で背後から犯されている。
 声は我慢しなくていい、と初めから言われていた。特別な部屋なのだろう。鍵束の中から選ばれたひとつを使って入った部屋。初めのうちに、今までもこんな風に誰かと使ったんちゃいますの?とちゃかして聞いておけばよかったかもしれない。もう、いまさら聞くことはできない。聞いて、そうだと答えられたら、志摩はショックで口も聞けないだろう。そのぐらい、志摩はこの関係にのめりこんでいる。
「ひっ・・・・・・ん、や、やっ」
 志摩を犯す性器は的確に感じるところを狙ってくる。志摩はそれから逃れるように身体を捩る。イクのだけは避けたい。まだこの熱を身体の奥で感じていたい。イッてしまえばそこで終了だ。二回目はない。志摩が一度射精をしたらそこで終わり。雪男が熱を放出しようがしまいがそれは変わらない。いつの間にかそういう決まりごとができてしまった。
 背後での動きが少し性急になる。ちらりと振り返ったら、腰を使っている雪男が腕時計を確認していた。
志摩は顔を歪めて机の上につっぷした。もうそろそろ彼の兄が食事の準備を終える時間だった。それが冷めるまでに彼は帰らなければならない。強情を張っていつまで経っても志摩が射精をしなかったら、性器を勃ち上がらせたままの志摩を放って雪男は兄のもとへ帰るだろう。
――だめや。泣いたら、あかん。
 嗚咽が漏れそうになる口元を志摩はぎゅっとかみ締める。
 少なくとも、時計は見ながらも雪男は志摩を絶頂へと導こうとしている。泣き出して雪男が興ざめしたら、それも終わりだ。
 実際二度ほどそんなことをやられて、熱を宿した身体でこの知らない場所に一人きりにされたときは最悪だった。泣きつづけることもできずに、志摩は小さく笑った。笑って、それでも関係を断ち切ることのできない自分を慰めた。
「あ、あ、せん・・・・・・せ、いっ・・・いいっ、イクっ、あああっ」
 もう我慢することは諦めた。いまさら何を我慢することがあるのか。とうの昔にいろいろなものはすでに諦めきっている。
そして、志摩は雪男に導かれるまま、教室の床の上に白濁をまきちらした。




「じゃあ、志摩くん。また」
 扉をばたんと閉めて、雪男が出て行く。直前まで間違いなく志摩と交わっていたはずなのに、先ほどまでの熱気は一切払拭して、涼しげな顔で出て行く。あっさりしたものだ。志摩が果ててからまだ数分しか経っていない。
そもそも、志摩と交わる時、雪男は服を脱がない。コートを脱ぐことはたまにはあるがそれもただの気まぐれだ。志摩と肌を合わせようという気がさらさらないのだ。
 志摩は雪男が出ていた扉をしばらく眺めたあと、すんっと一回だけ鼻をすすって床に散らばった自分の服を身につけ始めた。
「どうせ、肌あわせんのやったら、俺のかて脱がす必要ないやろ」
 いつもすべて脱がされてから(というか、脱ぐようにいわれるので、志摩が自ら脱ぐのだ)行為に及ぶので、終った後は雪男と違ってそれを身につけなければならない。
 もしかしたら、服を汚さないようにという雪男なりの配慮なのかもしれない。それならそれで、情けなくてしかたがない気分になった。その配慮の裏にあるのは志摩への気遣いではなく、この関係が他に漏れることの面倒を避けるためだとわかっているからだ。
 情があるから、セックスしているわけではない。そういうことなのだろう。
 そんな雪男が志摩の誘いに乗った理由はただ一つ。志摩から燐の様子を聞きだすこと。
 塾講師や祓魔師の任務で自分が傍にいられない時の燐のことを、雪男は最高の情報源を手に入れたとばかりに志摩に尋ねる。志摩は定期的に燐の様子を雪男に報告する。雪男は真剣にそれを聞いて、いくつかの情報は燐の今後のために吟味される。ちょっとした失敗話は本当に楽しそうに笑い声を上げて聞く。志摩との行為の最中は一切みせない表情だ。
 あまりにもしつこく燐の様子を聞くので、志摩が「ストーカーみたいやね」とこぼしたら嬉しそうな顔をしたから心底吐き気がして、続けて「狂ってはる」といったら満面の笑みを浮かべられた。それは志摩がみた雪男の笑顔の中でも極上の部類に入るものだった。
「もう、ええよ」
 身体はひどく疲れていて、腕を動かすのもおっくうだったが、ここはいつまでも一人でいたい場所じゃない。なにもかもに疲れていて、本当は泣き出したいような気もしたが、それは気のせいだ、と自分に言い聞かせた。
「ひどい、おひとや」
 学園への鍵を差し入れてノブを回す時にふと漏れた言葉。
 ――でも、本当の僕を知りたいといったのは、君の方でしょう?
 どこかから、そんな返事が聞えたような気がした。
「ほんまやね」
 それがわかるから、この関係は恋にはならない。知りたがり同士の一方通行な想いの押し付け合いの先にあるものは、いったいなんだ?
 少なくとも、今の志摩にできることは、彼の望む通りに彼の片恋相手の友人役を務め続けることだけだ。

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プロフィール

HN:
如月 ちょこ
性別:
女性
自己紹介:
■ 青の祓魔師二次創作
 テキストサイト。腐向け。
■ 雪燐中心です。
   藤メフィもあります。
■ 書店委託開始しました。
   詳細はofflineで。

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